2018 Fiscal Year Research-status Report
万葉研究における学際的共有化を推進するための方法論の構築
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18K00304
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
竹本 晃 大阪大谷大学, 文学部, 准教授 (60647832)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 万葉 / 木簡 / 墨書土器 / 出土文字資料 / 都城 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古代史学・考古学の手法を用いた、万葉研究者(上代文学)のための支援ツール(学際的文献目録)の作成と、それを土台とした万葉歌再解釈のための方法論の構築を目的とし、前課題での検討対象(『万葉集』巻第1・2)に後続するものである。 本課題は、研究期間内に『万葉集』巻第3・4を対象として進めているが、1年目は、巻第3・4の対象となる場所(万葉故地)についての発掘調査報告書の目録作成のために、歌番号順に出土遺構の発掘調査報告書を網羅的に収集することを目指して進めてきた。具体的には、遺跡名を特定する作業から始め、その後に現地の図書館などで文献調査をしつつ、目録候補に入れるべきかを精査しながらデータを入力するという作業手順である。それと同時に、現地踏査も行い、考古学や古代史学の見地から総合的に判断した出土遺構の目録を完成させる予定であった。 実地調査した箇所は、播磨灘に面する故地と関連する遺跡、熊本県の水島に関係する故地、北部九州の古代交通路である。播磨灘に面する地域については、巻第3の歌にとどまらず、ほかの巻にも関係歌が収められており、広範囲での地域的調査が必要であると感じた。今回は、製塩遺跡に関するものに絞って踏査を行ったが、やはりすべて網羅できたわけではない。水島については、水島と球磨川を挟んで対岸に位置する大鼠蔵緑地(当時の水島であるという説あり)を含めて、地形的な問題を中心に把握し、報告書を収集した。北部九州の交通路については、各古代山城の重要性を認識するとともに、報告書を順次収集している。 途中の成果として、大津皇子に関する論考一本(「大津皇子関係歌の形成と伊勢下向」)と、聖徳太子が歌を詠んだ竹原井に関する講演一本(「平城・難波の往還路で見たもの―大和川沿いの景色―」)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
必要な物品の購入などは順調に進められているが、天候のタイミングや、調査地の交通路の便が悪くて一度にまとめてまわることができず、初年度に思ったほど消化できなかった。それに、新しく刊行された報告書などのこともあり、前課題である巻第1・2の補遺の必要性を感じ、それらを同時に行っているため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、前年度にやり残した分に加えて、巻第3・4の歌句と出土木簡との関連を探る。作業手順は、歌句の中から全国出土の木簡に関係するものを見つけ、木簡が出土した遺跡の報告書や文献を、奈良文化財研究所の「木簡庫」および「全国木簡出土遺跡・報告書データベース」を効率よく活用しつつ収集し、万葉歌・木簡関係文献目録を作成する。そして、それを前年度に作成した目録に組み込む。 3年目は、これらを土台に、万葉歌再解釈のための方法論を構築していく作業を行うが、1年目の遅れを取り戻すために、3年目に行う作業を前倒しして、2年目(令和元年度)に混ぜ込みつつ、徐々に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた調査出張に行けなくなったことで残額が生じた。その残額は、次年度の早い段階で使用する予定である。
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Research Products
(3 results)