2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00311
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
清登 典子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60177954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深沢 了子 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (30350581)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 夜半亭蕪村句集発句データ / 蕪村自筆句帳欠落箇所復元 / 蕪村句集類との対応関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、新出『夜半亭蕪村句集』収載発句全句について、蕪村一派の句会記録四点(『夏より』『高徳院発句会』『月並発句帖』『耳たむし』)、および蕪村関係句集五点(『落日庵句集』『夜半叟句集』『蕪村自筆句帳』『蕪村句集』『蕪村遺稿』)との対応関係について調査した結果をExcelファイルに書き入れてデータとして蓄積する作業を進めた。春部、夏部、秋部についてまでは、ほぼ対応関係を明らかにするデータ蓄積を行うことができた。 そのことで、『夜半亭蕪村句集』が『蕪村自筆句帳』の選句元資料であった可能性が極めて高いことが明確となり、そこから現在は句稿断簡未発見のために欠落箇所が存在している『蕪村自筆句帳』の欠落箇所を復元できる可能性が見えてきた。研究代表者(清登典子)は、昨年度発表した、春部欠落箇所復元の試み(「『蕪村自筆句帳』復元の試みー春部欠落箇所の復元」(『文藝言語研究』77号、2020年3月)につづき、今年度は、夏部欠落箇所復元に取り組み、その成果を「『蕪村自筆句帳』夏部欠落箇所復元の試み」(大阪俳文学研究会『俳文学報』54号、2020年10月)として発表することができた。 さらに、これまで『夜半亭蕪村句集』収載句の句形については、原本での確認ができず(所蔵先図書館と出版社との契約のため)、疑問点がありながらも所蔵先である天理大学付属天理図書館の紀要『ビブリア』誌144号、145号掲載の活字翻刻に基づいたデータ作成しか行えなかったのであるが、2020年12月24日刊行の『新天理図書館善本叢書36 蕪村集二』(八木書店)により、原本の影印による文字の確認が可能となった。その結果、発句や前書を確認することでデータの正確性を高めることができるようになった。すぐに発句および前書等の確認作業にかかり、春部の見直しを行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、本年度は『夜半亭蕪村句集』の発句データを紙媒体で印刷し、研究会または学会で配布する予定であったが、新型コロナ感染症の流行拡大により、俳諧研究者の多くが所属する研究会や学会の全国大会などのほとんどすべてが開催中止という事態となってしまった。このため、紙媒体による印刷物の配布による修正点の指摘を受けて後に完成版として作成、配布する予定であった電子情報版によるデータの作成も行うことができなかった。 さらに、2020年12月24日に『夜半亭蕪村句集』の原本影印本として『新天理図書館善本叢書36 蕪村集二』が刊行され、これまでデータ作成の基礎資料として用いてきた活字翻刻に多くの誤りがあることが明らかとなった。このためこれまでに作成したデータについて、発句の句形や書き込み、前書き等につき点検、修正を加えたうえで、データの修正版を作成する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、原本影印に基づいたデータの点検作業を行い、『夜半亭蕪村句集』の春部、夏部、秋部、冬部の四部すべての修正版データを完成させる。さらに一句ずつの「ヨミ」をつけることで発句索引、語彙索引等を作成する。そのうえで、紙媒体でのデータ印刷物を作成、製本して、俳文学会全国大会(2021年10月開催予定)などの全国規模の研究会において参加者である俳諧研究者に配布する。 その後、紙媒体のデータについて指摘された訂正点、修正点等について訂正、修正を加えた上で、完成した電子版データをCD版またはUSB版として、希望者への配布を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度に作成予定であった『夜半亭蕪村句集』の発句データの紙媒体による印刷物配布のための印刷、製本を行わないこととなったため。印刷費用、製本費用が使用されなくなった。これは、配布予定であった全国規模の俳諧関係学会や研究会が新型コロナ感染拡大のために中止となったことによるものであり、これらの費用を次年度に回すこととなった。 また、紙媒体によるデータ印刷物の配布後に、配布先研究者等から提供される訂正点、修正点の指摘を受けて作成する予定であった修正版の電子データの配布用に用いるCD、USB等も購入を見送ったため、これらの購入費用も次年度に回すこととなった。 次年度は、まずデータの点検見直し作業を科研メンバー全員で行うために必要な機器の購入を行い、さらに関連句集類の確認のための調査を行ったうえで、作成したデータの印刷、製本を行い、その後、訂正・修正を加えた修正版データをCDおよびUSBに入力して希望者に配布する予定であり、印刷・製本費やCD・USBの購入費等として助成金を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)