2020 Fiscal Year Research-status Report
「帝国日本形成の物語」(西南・日清・日露各戦争の記憶)の成立に関する調査・研究
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18K00317
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樋口 大祐 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90324889)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 記憶 / 物語 / 国民史 / 少数者 / 植民地 / 帝国 / ジェンダー / ポリフォニー |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナ禍のため、予定していた海外における資料調査を行うことができなかった。そのため、すでに収集した資料の分析と、その分析結果にもとづく論文執筆、国内で入手可能な資料の収集等の活動に注力した。 具体的には、資料の分析については、岡本達明『水俣病の民衆史』(日本評論社)、『石牟礼道子自伝』等の分析を通して、水俣市における日清日露戦争の影響と関連言説に関する分析を行った。 論文執筆については、『文学と環境』23号に「石牟礼道子における「貴種流離」の逆説について」を執筆し、日清・日露の戦争を経た1930年前後の水俣市において、天皇の日本窒素水俣工場への行幸に際して、権力が楚の道すじから精神異常者を排除しようとした様子と、それに対する家族の抵抗の形態、さらにそれを目撃した(当時幼女であった)作家・石村道子の解釈の在り方を巡って考察を施した。また、竹沢泰子との共編で『百花繚乱-ひょうごの多文化共生150年のあゆみ-』(神戸新聞総合出版センター)を刊行し、その中で兵庫県の多文化状況と日清日露戦争の影響について言及した。 新たな資料収集については、『満洲映画』の全バックナンバーを購入し、満洲映画史の中で日清・日露戦争の記憶がどのように伝承されているかという観点からの資料収集と論点整理を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響で海外調査はできなかったものの、国内における資料分析と収集作業は比較的順調に進み、2021年度以降の研究成果発信に結び付けることができると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度もコロナ禍は継続すると考えられ、海外での大規模調査等は実現できない可能性が高い。 そのような状況認識に基づき、国内、特に長期出張を必要としない(兵庫県等の)関西圏の文化史に焦点を絞り、当該文化史における西南・日清・日露戦争とそこで形成された帝国意識がもたらしたものについて、多角的に資料収集・分析及び研究成果の公表を進めたいと考えている。
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Research Products
(2 results)