2019 Fiscal Year Research-status Report
紀州地域の寺社圏における歴史叙述資料の文献学的研究―史的言説の集積と考証―
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18K00318
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
大橋 直義 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (50636420)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 道成寺 / 興国寺 / 七宝瀧寺 / 西国順礼 / 法燈派 / 葛城修験 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績は下記のように概括される。 第1に、道成寺文書の整理およびそのアーカイヴスの仕組みについての研究成果である。2019年9月9日にクロアチア・オシイェク大学と和歌山大学との協定に基づいて開催された国際学術会議「International conference Technological Changes and Society」において、口頭発表「Progress of Archival Technology and Historical Materials during the Medieval and Early Modern Period in Japan」を行なった(貫井裕恵氏[神奈川県立金沢文庫]と共同発表)。そこで、金沢文庫(称名寺)、東寺、醍醐寺などの中央・東国の寺院における聖教・文書アーカイヴスの状況と、道成寺文書アーカイヴスの比較を行うことで、地域寺院におけるアーカイヴスの実際の姿について検討を行なった。なお、その報告の成果は、さらにオシイェク国立公文書館の2020年度企画パネル展「金沢文庫と紀州地域―高野山と熊野三山を中心に」に結実させる予定であったが、延期となった。 第2に、道成寺蔵『古伝口訣 西国卅三所順礼縁起』を軸とした研究である。その成果は単著論文「西国順礼縁起攷」として倉本一宏, 小峯和明, 古橋信孝編『説話の形成と周縁 中近世篇』(臨川書店、2019.7)に掲載した。その成果を端的に示せば、室町中期に盛んに著されるようになる西国順礼縁起の一群の形成に法燈派および花山院家の信仰が深く関わっていたことについて論じたものである。 第3に、上記の成果の延長線上に位置づけられるものとして、法燈派と葛城修験との関係についての素地を検討するべく、七宝瀧寺および粉河寺・根来寺とその周辺寺院の調査を進展させ、展覧会およびその図録として結実させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
道成寺文書の調査については、2019年4月~7月および2020年2~3月に集中して行なう予定であった。2019年中の調査は、勤務先大学および紀州経済史文化史研究所として行なえたこともあり、順調に進捗したが、2020年における調査は調査員および先方寺院の安全確保という観点から、中止せざるをえなかった。しかしながら、既存データの整理にあてたため、大幅な遅れは出ていない。 一方、2019年後半に集中的に行なった七宝瀧寺関連の調査研究は、当初の想定以上の成果を得られることとなり、本研究計画のさらなる視野の拡大をもたらしたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画最終年度にむけ、道成寺文書の集中的な調査と研究成果の報告を目指す。そのためには、さらなる重点的な調査が必要だが、COVID-19感染防止のため、少人数での調査となることは否めない。調査範囲を限定した上で、その分、より詳細な調査研究を行なう方向に転じたい。 また、本年度に得られた成果によって、葛城修験、順礼、法燈派という要素の連環が具体的に確認されつつある。本研究計画の中心にある道成寺文書においても葛城修験関連の資料は多くあり、最終年度はそこに力点を置いた調査および研究を推進する。
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Research Products
(8 results)