2018 Fiscal Year Research-status Report
書簡・雑記資料を中心とした17~18世紀学芸史の研究
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18K00320
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川平 敏文 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (60336972)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 盧草拙 / 盧氏文書 / 長崎学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず九州大学古賀文庫に所蔵される『盧氏文書』についての研究を行った。該書は、十八世紀初頭に長崎において活動した学者・盧草拙関連の資料を、近代になって、長崎の郷土史家・古賀十二郎が模写・編纂したものである。盧草拙の祖父は中国福建省からの渡来人、父は医者であった。草拙は長崎聖堂の学頭および書物改添役として、聖堂祭酒である向井元成をよく補佐した。長崎には盧氏のような渡来人の子孫も多く、そこには独自のコミュニティおよび文化が形成された。漢学ひとつをとってみても、書物による知識に偏向した日本のそれとは異なり、土俗的な信仰や思想と結びついた、いわば「本場」の漢学が展開したのである。草拙はまさしくそのような長崎漢学コミュニティの中心にいた人物であることが、今回の研究によって浮き彫りになった。 具体的な作業としては、まず『盧氏文書』の書誌調査(九州大学および長崎歴史文化博物館)、撮影を行った。次に大学院生数名のアルバイトを雇用し、その翻刻原稿を作成した。そしてその原稿を、研究代表者である川平が、原本画像と突き合わせて3回にわたり校正。最後に、本資料の内容にかんする考察、すなわち草拙の交遊関係、草拙の思想などについての論じた解題を執筆、2018年度末に『盧氏文書―盧草拙資料―』(雅俗研究叢書Ⅳ)と題する資料集として出版した。 また、次年度への足掛かりとして、室鳩巣の来信を多く集めた『兼山麗澤秘策』の研究についても取り掛かった。東京を中心に数ヶ所、書誌調査を行うとともに、翻刻をふくめたデータ構築方法についての検討を始めた。 さらに、『兼山麗澤秘策』のなかの記事について紹介する小文を学術雑誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『盧氏文書』の翻刻およびその考察を加えた資料集の刊行がスムーズであった。当初は年度末に入稿するくらいのスケジュールであったが、1月には入稿できたので、その分、次年度の研究遂行へ向けての戦略を練る機会が持てた。ただし、当初予定していた『兼山麗澤秘策』の書誌調査はやや目標を下回ったので、その点は次年度へ向けての課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は『兼山麗澤秘策』の書誌調査をもう少し精力的に行いたい。また、当初は全文翻刻を予定していたが、分量が多いということ、雇用できるアルバイト学生が不足していることなどの問題により、より簡易的な「人名・書名データベース」の構築へと目標を修正する方向で検討している。本年度の末に、すでにそのデータベースを試行的に作成するところまで終えている。
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Research Products
(2 results)