2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00326
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石川 透 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (30211725)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 丹緑本 / 江戸時代初期 / 版本 / 絵入り本 / 奈良絵本・絵巻 / 御伽文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
丹緑本とは、江戸時代初期に制作された版本に彩色を施した絵本群のことである。残念ながら国内外に点在していることもあって、これまで本格的な研究がほとんどなされることもなく、その所在目録すらできていなかった。また、御伽草子の語源となった御伽文庫本は、横型奈良絵本とも関わる本であるが、その成立には、丹緑本として作られた可能性がきわめて大きいことが分かってきた。このような状況の中で、国内外の丹緑本の所在を網羅的に調査し、できうる限り多くの伝本を撮影デジタル化した上で、本格的な研究を行いたい。これによって、これまで謎であった丹緑本の制作方法や、各地に伝わる偽物とされる丹緑本と本物の丹緑本との区別の問題も解決できるものと考えている。それらの情報は、可能な限りインターネット等を通して、誰にでも役立つようにしたい。 以上の方針から、2018・2019年度に続いて2020年度にも、できるだけ多くの丹緑本の調査撮影を行うことを計画したが、新型コロナ感染症の問題により、各地に赴き調査することが困難になってしまった。計画していた海外への調査は全くできず、唯一遠隔地で調査できたのが大阪での古典籍入札会のみとなり、本年度は、過去に収集した丹緑本のデータ整理を行うこととなった。したがって、予算の多くを次年度に持ち越すことを申請した次第である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況は、1・2年目はおおむね順調であったが、3年目の2020年度は、新型コロナ感染症の拡大により、計画が大きく頓挫してしまった。丹緑本という、これまで本格的な学術研究が行われていない作品については、現地での調査が不可欠であるが、その一番重要な調査が2020年度は、ほとんど行われていないのである。本来の予定を越え、次年度にこの課題を持ち越すことにし、もし新型コロナ感染症の影響で調査がはかどらない場合には、インターネット上の情報を中心に増補を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、可能であれば、本来3年目の計画を実施したいと考えている。すなわち、丹緑本を保管している、国内外の機関や個人宅においての現地調査を行い、多くの情報を収集するのである。その際に、撮影可能であるならば撮影し、デジタル画像を比較しながら研究を推進することになる。当たり前のことではあるが、未開拓の分野については、初期段階での情報収集が最も重要であり、私自身も奈良絵本・絵巻の研究において実感したことである。 したがって、国内外での現地調査に最も多くの費用を使用することになるが、目的物を調査した時点で、新しい情報が入ることがよくある。2019年度に調査に赴いた場所でも、目録化されていないがこのような作品を所蔵しているとか、目録化されていても、その情報が間違っていることも、特に海外では頻繁に起こるのである。もちろんそのような場合には、同じ場所に赴いて調査を行うことになる。しばらくは、このような作業の繰り返しが今後の推進方策であるといえよう。 以上のような方針は今後も変化はないが、気がかりなのは、2020年1月から始まった新型コロナ問題による、内外の図書館・美術館等の丹緑本を所有する施設の動向である。場合によっては、本企画において最も基本的で重要な丹緑本の調査が行えない可能性がある。その場合には、これまでのデータの整理や、古典籍販売目録を含むネット上に掲載されている丹緑本の調査を中心に活動を続けたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナ感染症の拡大の影響により、当初計画していた、丹緑本の海外における調査撮影、並びに、国内における調査撮影がほとんどできない状態となってしまった。丹緑本研究においては、実物の調査が最も重要であるので、多くの費用の次年度への繰り越しをせざるをえなかった。次年度には、可能であれば、丹緑本の海外と国内の調査撮影を継続したいと考えている。しかしながら、周知のように新型コロナ感染症の影響は依然として大きく、次年度に本来の計画が実施できるかは不透明である。そこで、可能な限りでの海外・国内の実地調査を行うとともに、これまでのデータの整理や、古典籍販売目録を含むインターネット上に掲載されている丹緑本の調査を中心に活動を行いたいと考えている。インターネット上の情報は、特に和装本については、国文学研究資料館等の努力により、かなり充実してきたので、その情報を多く使用する計画である。
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Research Products
(1 results)