2019 Fiscal Year Research-status Report
『太平記』の諸本展開と南北朝・室町の文芸・政治・社会
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18K00331
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小秋元 段 法政大学, 文学部, 教授 (30281554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 昌幸 関西学院大学, 文学部, 教授 (20411770)
和田 琢磨 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40366993)
森田 貴之 南山大学, 人文学部, 准教授 (90611591)
大坪 亮介 大阪大谷大学, 文学部, 専任講師 (10713117)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 太平記 / 軍記物語 / 南北朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
「『太平記』の諸本展開と南北朝・室町の文芸・政治・社会」と題する本研究は、『太平記』の本文流動の動態をとらえ、それを促す背景を究明することを目的とする。すなわち、個々の伝本の本文のもつ独自性に着目し、それを生みだすメカニズムを、一つは、作品成立期である南北朝期の政治状況との関わりから、もう一つは、流布期にあたる室町期の享受・書写圏の文学・文化・社会的環境との関わりから明らかにすることをめざしている。 以上の目的のもとで、本年度は主に①「応安・永和期の政治状況と『太平記』」、②「南北朝期における『太平記』本文流動の要因」、③「禅林文化と『太平記』の漢籍的記事」をテーマに各研究者が研究を実施した。 その成果として、研究メンバーは松尾葦江氏編『軍記物語講座』第3巻(花鳥社、2019年10月刊)の刊行に全面的に協力し、和田琢磨「『太平記』と武家」、小秋元段「『太平記』における禅的要素、序説」、森田貴之「『太平記』の禅学、宋学」、北村昌幸「『太平記』の表現」を寄稿するかたちで発表した。また、大坪亮介は『南北朝軍記物語論』を公刊した(和泉書院、2020年2月)。本書は上記①②を網羅的に論じた研究書である。このほか、小秋元段「「雲景未来記」の批評精神と『太平記』の現実感覚」(『アナホリッシュ國文學』8、2019年11月)、和田琢磨「西源院本『太平記』の基礎的研究 : 巻一・巻二十一の書き入れを中心に」(『国文学研究』190、2020年3月)は、ともに西源院本を扱い、②の視点を深める論究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年に松尾葦江氏が編集を企画した『軍記物語講座』のうち、第3巻『平和の世は来るか:太平記』の編集に全面的に協力することにより、本研究の成果を遺憾なく発揮することができた。また、大坪亮介氏が既発表の論に加え、新稿を複数交えた論著『南北朝軍記物語論』を公刊できたことも特筆される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を踏まえて研究を進めるとともに、「室町期の武家における文芸享受と『太平記』」「室町期の社会環境と『太平記』の本文流動」等のテーマも対象として、調査活動を継続する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で、2019年2~3月に研究会、出張調査ができなかったため。2019年度に行えなかった分については、2020年8月、2021年2~3月に実施する予定である。
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