2019 Fiscal Year Research-status Report
民間情報教育局(CIE)で調査対象となった文芸雑誌・総合雑誌の検閲の国際的研究
Project/Area Number |
18K00333
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
十重田 裕一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40237053)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本文学 / 検閲 / 内務省 / GHQ / メディア / 出版 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、Survey of Selected Japanese Newspapers and Magazines(1948年)で対象となった文芸雑誌・総合雑誌の調査をアメリカ合衆国メリーランド大学のゴードンW.プランゲ文庫で行い、そこで得た資料の分析を通じて、占領期の日本近代文学に見られる検閲の特色を解明することである。研究を進めるにあたっては、GHQ/SCAPによる指示のある校正刷・出版物・検閲文書を中心にしながら、必要に応じて、直筆原稿や執筆者・編集者の証言についても調査を行った。研究の状況は当初の計画よりも進展しており、関連する研究実績として、編著書『「言論統制」の近代を問いなおす――検閲が文学と出版にもたらしたもの』(金ヨンロン・尾崎名津子・十重田裕一、花鳥社、pp.1-221、2020年9月)を刊行し、単行本収録論文についても、十重田裕一「民間情報教育局の調査対象になった文芸雑誌と占領期検閲をめぐる序説」(坪井秀人編『戦後日本文化再考』三人社、pp.118-124、2020年10月)を発表した。本論文は、占領期日本のマス・メディアの状況を把握するために実施され、GHQ/SCAP(General Headquarters/Supreme Commander for the Allied Powers)の部局の一つ、民間情報教育局(Civil Information and Educational Section、以下CIEと略す)によって行われた文芸雑誌『近代文学』『人間』『新日本文学』における検閲事例を分析し、著者・編集者ならびに出版社との鬩ぎ合いを探究し、占領期の日本近代文学と検閲との関連の一端を解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究の進捗状況は、当初の計画よりも進展しており、2019年度の前半には、「研究実績の概要」に掲げた、本研究課題に即した、単行本収録論文「民間情報教育局の調査対象になった文芸雑誌と占領期検閲をめぐる序説」をまとめ、坪井秀人編『戦後日本文化再考』(三人社、pp.118-124、2020年10月)に掲載された。また、本研究課題と密接に関連する編著書、『「言論統制」の近代を問いなおす――検閲が文学と出版にもたらしたもの』(金ヨンロン・尾崎名津子・十重田裕一、花鳥社、pp.1-221、2020年9月)を刊行した。2019年度の後半には、客員教授として招聘されたカリフォルニア大学ロサンゼルス校に2019年10月から2020年3月まで滞在し、検閲資料の調査を進めると同時に、同大学教授たちと共同研究を行った。また、この米国滞在中に、コロンビア大学、ペンシルベニア州立大学、スタンフォード大学、ブリティッシュ・コロンビア大学で研究発表、学術交流を積極的に行った。2019年度末に、新型コロナウイルス感染拡大のために、研究が大幅に制限されたが、それまでの研究の進捗状況が良好であったため、予定していた研究実績をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく、長期にわたるため、今後は研究が大幅に制限されることが予測される。特に予定していたアメリカ合衆国メリーランド大学のゴードンW.プランゲ文庫における米国での研究調査、研究成果の発表、学術交流については、予定どおりに進めることは困難となる可能性が高い。よって、研究計画を柔軟に変更しながら、今後も研究実績をあげることにしたい。今後の計画では、予定していたゴードンW.プランゲ文庫における米国での総合雑誌の調査を中止し、これまでの調査で得られた文学作品の有力誌における検閲事例を活用しながら研究を進める。これまで実施したプランゲ文庫の調査とそこで得られた資料の分析を通じて、GHQ/SCAPと文芸雑誌・総合雑誌との鬩ぎ合いを分析し、占領期における日本近代文学と検閲との関連に新たな照明を当て、その研究成果を国際的に共有するべく、日本国内外で積極的に発信する準備を着々と推進したい。もし状況が好転し、米国への渡航が可能になった場合には、コロンビア大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、スタンフォード大学などで研究報告をし、意見交換を行いたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は以下の2点である。1点目は、2019年度中に米国の大学の客員教授をつとめたことで、海外出張費を使用しないで済んだためであり、2点目は、新型コロナ感染拡大のために研究活動が制約されたことで研究費を使用できなかったためである。使用計画については、新型コロナ感染拡大が収束し、海外渡航が可能になった場合は、調査・研究発表等で渡航費を中心に研究費を使用する予定である。一方、海外渡航が難しい場合は、主に人件費に研究費を活用しながら、研究成果発表に注力したいと考えている。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 戦後日本文化再考2019
Author(s)
坪井秀人(編著)、十重田裕一ほか(分担執筆)
Total Pages
603(118-124)
Publisher
三人社
ISBN
9784866912295