2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K00354
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
遊佐 徹 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60240157)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 倭寇戯曲 / 日中交流史 / 明清通俗文学 / 中国伝統戯曲 / 白話小説 / 文言小説 / 東アジア文化交流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には、購入した資料および国会図書館関西館、東京大学東洋文化研究所等における資料調査に基づき、明清時代中国伝統戯曲(雑劇、伝奇)における倭寇戯曲のリストの完成を目指した。またリストアップした作品群から研究トピックを見つけ出すため、またこれまでまとまった形で提示されることがなかった倭寇戯曲の世界観、研究の必要性の認知度をあげる目的でリストアップした作品すべてに関してあらすじを書き表わす作業を実施した。 今年度までの作業で、明清時代の伝統戯曲作品には数多くの倭寇が登場する作品が存在していたことが明白になった。このことだけでも今回の研究の目的の大きな部分は果たせたと考えている。さらにそのリスト、知見に基づいて倭寇戯曲の特徴について初歩的なまとめを行うとともに倭寇小説との相違点についてもやはり初歩的な指摘を行った。 昨年に引き続き海外での(また一部国内での)資料調査、収集ができなかったものの、現存する倭寇戯曲作品について、その過半を主にコピーの形で収集することができた。この作業により、文字資料の面だけではなく作品に加えられた挿図の収集も進み、図像的倭寇イメージの研究を進める基盤も固めることができた。 上記の作業によって見出されたトピックの中から、倭寇の襲来源を邪馬台国に見出し、さらには卑弥呼の存在から倭寇を女性の戦闘集団と書きなした清代の伝奇作品『蟾宮操』に注目し、各論論文の一環として研究論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、研究計画上予定しまた必須の事項であった海外での倭寇戯曲作品の調査、収集そしてそれに対する分析ができなかったことが大きい。この調査、収集が進むことによって、現在作成中の倭寇戯曲目録をより完備した内容にすることができるとともに、個々の作品や作品群、特定モチーフに対する研究も進むことになるので、2021年度には、該感染症の収束状況にもよるが、是非とも所期の調査を中国及び韓国において実施したいと考えている。 海外調査同様、昨年度は国内移動も大きく制限されていたため、本研究課題と関連し、研究代表が参加している東京大学史料編纂所の共同研究「東アジアの合戦図の比較研究」においても十分な研究活動をすることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要欄に記したように、倭寇戯曲作品のリストアップはほぼ終了したため今後はそれらを利用した総論的まとめの執筆と各論的論文の執筆を進める。後者についてはすでに一篇を間もなく完成させる予定である。 また倭寇戯曲作品リストに関しても海外資料調査等を通じてさらなる補正を目指し、より完成度をあげるべく努力する。 加えて、大学院の授業において積極的にこれまでの研究成果を反映させる形で本研究の魅力と意義のアピールおよび若手研究者の育成による研究フィールドの拡大事業にも着手するつもりである。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の影響により予定していた国内、海外資料調査が実施できなかったため。
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Research Products
(2 results)