2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K00354
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
遊佐 徹 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60240157)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 倭寇小説 / 倭寇戯曲 / 日中交流史 / 異文化交流 / 中国小説史 / 中国戯曲史 / 日本・日本人イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、前年度において実施した中国明清時代の倭寇戯曲作品リストの補完作業「明清倭寇戯曲作目録(補)およびあらすじ」および昨年度までに公表した研究業績「明清倭寇戯曲目録(初稿)」および「倭寇戯曲作品あらすじ:明清古典戯曲版」に基づき、個別作品の研究とテーマ別研究を進めた。前者に関しては中国小説史、明代文学史、白話小説史において燦然たる存在感を示す馮夢龍が書いた伝奇『双雄記』に注目し、詳細に作品中の倭寇および日本についての記述に関し、その典拠、情報源の探索を実施し、従来の研究では明らかにされることがなかった作品成立の秘密を解明し得た。また、作品に盛り込まれた日本語情報について明代の日本語研究書を利用しての解読を試みた。この研究はそもそも馮夢龍が倭寇小説「楊八老越国奇逢」(『警世通言』所収)も手掛けており、倭寇戯曲と倭寇小説双方に筆を揮った中国文学史上稀有な存在であったことから構想されたものであり、令和4年度には、倭寇小説作者としての馮夢龍に着目した続編を発表する予定である。後者に関しては、倭寇戯曲に描かれた日本イメージについて、日本人像、日本の支配者についての想像と固定観念、日本地勢、日本文化についての知識等について倭寇戯曲そして倭寇小説から適宜記述を収集する作業を進めた。これらについては令和4年度に改めて考察する作業に入ることにしている。令和3年度には、また、倭寇小説について、これまでの研究で得た資料以外の新たな作品を清末小説にまで範囲を広げて探索する作業を開始した。この作業は、今後文言小説にまで範囲を広げるつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の蔓延状況に十分な改善傾向が見られず、研究計画上予定していた海外機関での資料調査が全く実施できなかったのみならず、国内の大学図書館もほぼ学外利用者をシャットアウトしたため、研究の一部に重大な遅れが生じたため。結局この状態が2年間続いていることで研究計画の一定程度の変更を余儀なくされていることも大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度には、本研究課題「倭港戯曲、倭寇小説の研究」を引き継ぎ、その内容を拡大させた「明清時代の通俗文学における日本・日本人イメージの研究」が科学研究費補助金の基盤研究(C)に採択された。今後はその後掲研究とも関連させながら研究の遅れを取り戻したい。また、可能であればこの2年間全く実施できなかった海外機関での資料調査も実現したい。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況にも記したように、新型コロナウイルス感染症が収束しない状況により、研究期間を延ばさざるを得なかったため、一定規模の経費を繰越使用できるように措置した。具体的な使用計画としては国立国会図書館関西館への資料調査旅費に充てるつもりである。
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Research Products
(2 results)