2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Wakou novels and Wakou dramas
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18K00354
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
遊佐 徹 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60240157)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 異文化交流 / 倭寇小説 / 倭寇戯曲 / 馮夢龍 / 日本イメージ / 日本人イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度(研究最終年度)は昨年度に引きつつく形で収集した倭寇小説、倭寇戯曲テキストおよび倭寇関連史料、資料を踏まえて個別論文の執筆に注力した。具体的には前年度から進めてきた、倭寇小説、倭寇戯曲、そして文言の倭寇小説の著録といった様々なジャンルにおいて極めて興味深い作品を残した明代を代表する通俗文学作家の馮夢龍(そもそも倭寇を題材とした作品を残した作者のなかで複数のジャンルにまたがって作品を残した例は稀有である)について考察した。その結果として、上述の特徴に加えて、彼の倭寇の描写自体は非常にリアルなものであり、倭寇に対する関心の高さと知識の豊富さが確認された。また、直接論文の内容には羽鋳させなかったが、馮夢龍はその最晩年に仕官を果たし福建省寿寧県の県令として赴任するが、その地は倭寇の来襲の記憶を色濃く残す土地であり、彼の倭寇との因縁を強く感じさせる出来事として捉え直すことができる事象であった。中国通俗文学史において燦然たる輝きを放っている馮夢龍の研究における倭寇の存在の重要性の指摘という点で本研究成果は大きな意味を持つと自負する。 研究期間全体を通しては以下のような研究成果を上げるに至った。①通俗文学、通俗文化および図像文化のなかで明代以降日本、日本人が倭寇を借りてどのように描かれてきたのかの分析。②倭寇小説、倭寇戯曲の広まり、影響関係の考察。③倭寇小説、倭寇戯曲の全容の提示、すなわち明代から近代に至るまでの倭寇を描いた作品の全容をデータ化。その一方で、研究期間全体にわたって新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受けることなり(そのために研究期間の延長も申請した)、所期の研究(中国、韓国での資料調査を前提とする研究)が進まなかったことも事実である。それについては、本研究課題の発展形の基盤研究(C)「明清時代の通俗文学における日本、日本人イメージの研究」に持ち越すこととした。
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Research Products
(1 results)