2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00361
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
松尾 肇子 東海学園大学, 人文学部, 教授 (20202319)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 王観 / 詩淵 / 高麗史楽志 / 寿詞 / 連作 / 減字木蘭花 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は王観を取り上げて調査研究を進めた。初年度であるため、データ入力するテキスト類の選定および入力に一定の時間をかけた。まずは各種詞選集を揃え、静嘉堂文庫に収蔵される詞選集を中心に調査した。特に清朝の蔵書家である労権の書入れと活字本との対照は有意義であった。王観については詞選集の収録状況から『花庵詞選』に輯録された作品を中心に読まれ研究が進められてきたことを確認した。なお『花庵詞選』の選録基準を知るための作業の一環として著者である黄昇自身の詞集『散華庵詞』の四庫提要の訳注を作成し『風絮』15号に掲載した。 一方で王観の伝記研究および作品の作者同定を進め、『全宋詞』収録の際の原本を再調査した。その中で類書『詩淵』から輯録された十二首がすべて寿詞であり、かつそのうち一首は徽宗朝以前に伝わったとされる『高麗史』「楽志」に含まれていることに気づき精査。そこに作品が収録されており、王観とあまり時代が変わらないと思われる蘇庠の詞と伝記の訳注を『風絮』15号に掲載した。 なお王観の寿詞十二首のうち十首の詞牌は「減字木蘭花」、さらに同一箇所に同一句を置いており、連作であった可能性が高い。そこで詞における連作の意味を考察した。北宋における寿詞の位置づけ、詞牌の使用頻度から、王観の寿詞の連作は当時かなり奇抜なものだったと結論づけた。連作以外の寿詞に、南宋末元初の類書『新編通用啓箚截江網』に収録されたものがあり、寿詞の流行にともなって長く王観の詞が流行していたことが推測できる。 王観を中心に、皇帝の大宴や高麗との音楽交流の中で寿詞が一定の役割果たしたこと、また詞の連作の意味を明らかにできたことは少なからぬ意義を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
王観については最も早いと思われる輯佚書『唐五代宋遼金元名家詞集六十種輯』所収本の確認ができないため、公刊を見合わせた。康与之については十分な進展が見られないため。
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Strategy for Future Research Activity |
『唐五代宋遼金元名家詞集六十種輯』を閲覧するため台湾大学図書館を訪問し、確認したうえで王観についての論文を公刊する。当初の研究計画に従って、康与之および晁補之について確実に進めることにつとめる。計画変更の必要は現時点ではないと判断している。
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Causes of Carryover |
物品費として予定していた書籍の購入費用に未使用分がでたため次年度使用額が生じた。2年目に予定していた国内旅費と合わせて、台湾大学図書館へ資料調査に赴く旅費とする。
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