2019 Fiscal Year Research-status Report
近代初期イギリスの商業劇場における楽屋正面壁の構造と使用方法に関する総合的研究
Project/Area Number |
18K00365
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市川 真理子 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80142785)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 劇場 / 舞台 / 楽屋正面壁 / ドア / ステイジング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も、大別して、次の三つの営為から構成される研究を行った。1.劇テクストの調査・分析によるデータ収集、2.関連する諸研究の調査および研究、3.論考の作成。昨年度、1、2が順調に進んでいたため、本年度は、3に力点を置くことができた。以下、それぞれについて順に記す。 1. 劇テクストを一つ一つ調査して、楽屋正面壁の構造に言及すると思われるト書き、台詞、書き込みなどを収集し、劇が上演された劇場別に分類した。ファクシミリで間に合う作品は国内で分析し、直接オリジナル・テクストを調査する必要のあるものについては、British Library で調査した。その際、あるマニュスクリプトの中に、当時の劇場構造を示唆する比喩的表現を見つけたが、これは有力な証拠となる可能性がある。 2. 収集したデータを有効に分析し議論を深めていくために、関連諸分野の調査および研究を行った。当時の劇場や劇団に関する研究や、劇テクストの出版や印刷に関する研究など、初期近代イギリス演劇に関する諸研究は当然ながら、美術史や宗教史なども視野に入れた調査および研究を行うよう心掛けた。新旧を問わず調査の対象とし、特に古いものに関しては、British Library で閲覧したり複写したりした。極めて関連の深い研究書を見つけることができたのは幸いであった。 3.こうした調査を行いながら、最近影響力を持ち始めた "two-door stage theory" について考察を行い、論考を完成することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
次の2つの理由により、当初の計画以上に進展していると考える。 1. 昨年度と本年度は、主として、データの収集および関連する諸研究の調査を行う予定であったが、幸い、重要なデータを収集することができた。また、きわめて有益な資料に出会ったこともあり、理論の構築につながる見解を持ち、論考を完成し、国際誌に掲載されることとなった。 2. 上記の論文を仕上げながら、海外の研究者たちと直接あるいは Eメールにより意見を交換し合うことができた。そうした意見交換を通して、新たに考察すべき問題が明確になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)劇テクストの調査・分析によるデータ収集の継続:データの収集とその整理を続ける。テクストの事実こそが常に議論の出発点であるからである。可能な限り、オリジナルテクストに当たる。そのため、British Library などの研究図書館での調査を行う。 (2)関連する諸研究の調査および研究の継続:上記のような初期近代イギリス演劇関係諸分野をはじめ、美術史や建築史の分野にまでいたる範囲の研究書や論文を対象とする調査および研究を継続して行う。国内で入手することのできない文献は、British Library 等で閲覧したり複写したりする。 (3)研究成果の発表と理論の構築:収集したデータを分析しながら、ある問題について考えがまとまるごとに、その問題を扱う研究ノートや論文を書く。これまで行った研究内容に修正の必要がないかということなども十分に考察しなければならない。それらをベースに オリジナル・ステイジングや関連諸分野の研究者たちと議論を重ねる。また、国際雑誌に投稿したりすることで、広く初期近代イギリス劇の研究者たちからのフィードバックを得ることができるようにする。こうした営為を通して、楽屋正面壁の構造と使用方法に関する一定の結論を得る。
|
Causes of Carryover |
年度末に調査のための出張を計画していたが、新型コロナウイルス (CORVID-19) 感染拡大のため断念せざるを得ず、そのために残しておいた金額を使用することができなかった。次年度は、本研究が目指す理論の構築に向けて、より有力な証拠を発見するために、いっそう研究調査に力を入るつもりなので、次年度に繰り越した額は、そうした調査のための旅費や、図書や資料の購入費として、有効に活用することができるはずである。
|
Research Products
(1 results)