2019 Fiscal Year Research-status Report
シェイクスピア戯曲の二つ折り本(第1版から第4版まで)の研究
Project/Area Number |
18K00370
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桑山 智成 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (40388062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住本 規子 明星大学, 人文学部, 教授 (10247174)
廣田 篤彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (40292718)
長瀬 真理子 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (80636506)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 書誌学 / 文学研究 / 演劇研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
住本は明星大学図書館所蔵F2の調査を終了しF3の調査に着手した。海外ではフォルジャー・シェイクスピア図書館とアメリカ議会図書館においてF1-F4の34冊の調査を昨年度の要領で実施した。特にプレスヴァリアンツ研究で発見のあったF2のRichard IIIのト書きのエラー(Sig. t2)とJulius Caesar題字の合字の印刷位置との組み合わせについてサンプルを追加することができ、成果発表の準備が進んだ。廣田は、前年度に引き続き、HamletならびにKing Learについて初期Fテクスト本文とQ(四つ折本)の比較検討を行う一方で、F3に関する研究を開始した。具体的にはF3の第2刷から追加されたSir Thomas Cromwell、Locrine、Sir John Oldcastleを取り上げ、これらの本文をBritish Library所蔵の複数のQを参照しながらF3の本文と照合し、次年度のテクストの内容検討への準備を行った。長瀬は、明星大学資料図書館においてF4のTragedies (Aaa1 r -Cccc2 r)およびTitle Page (第一刷、第二刷とも)の印刷者を特定する調査を行ったところ、同図書館所蔵の別の古版本(1670年代、80年代出版)にF4印刷に際して使用されたものと同じ欠損活字が複数見つかった。この同定によりF4の特定箇所の印刷を請け負った印刷所の特定が可能となった。桒山は、F1で初めて出版された作品のF2-F4校訂を考察し、上演由来の資料の存在は可能性が極めて低いと結論付けた。同時にBen Crystal率いる劇団Shakespeare EnsembleによるF2版Macbethの公演を企画し(2019年9月2日於京大人間・環境学研究科棟地下講義室)、実際の上演を通して、F2校訂について役者と観客からのフィードバックも含め、考察を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績概要で示した研究活動内容は研究実施計画に概ね合致して進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
廣田は、以下の3つの視点から研究を進める。①The Merry Wives of Windsorを取り上げ、1602年刊行の四つ折本と初期二つ折本の本文を比較検討する。②本年度開始した、F3第2刷において追加された劇についての考察を継続し、特にPericles、The Yorkshire Tragedyについての検討を開始すると共に、前年度に本文の確認を終えた3戯曲について、F4を含め解釈の可能性を試みる。③3年間の研究を総括し、初期二つ折本解釈の新たな可能性を探求する。長瀬は、F4と同一の欠損活字が使用されている古版本について分担印刷の状況を調査し、F4 Tragedies印刷者同定に関する論文をまとめる。また、1951年の研究で指摘されたRobert RobertsのF4 Comedies印刷への関与についても、その真偽とF4の分担印刷の実態を考察しながら調査する。 桒山は、F1以前にQとして出版された作品のF2-4校訂に関して、その性質を調査し、F2-4の校訂に上演表現としてどのような可能性があるのか考察する。また、共同研究者全員が3年間の研究成果を発表するセミナーを開催し、これによって17世紀のシェイクスピア戯曲全集第2版-第4版(F2-F4)の性質と意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
世界的なコロナウィルス感染拡大により、年度末に予定していた海外での調査がキャンセルとなったことに起因している。この金額はウィルスの拡大が収まれば海外調査に使用し、終息しない場合は、年度末に計画している合同セミナーをより充実したものにするための開催費用として使用する予定である。
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