2018 Fiscal Year Research-status Report
Geographical Imagination in English Novels--Migration and Geopolitics
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18K00371
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
服部 典之 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50172937)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地政学 / 地理学的想像力 / James Hogg / イングランド・スコットランド合同 / George Whitefield |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の本研究課題に関する最大の実績は日本を代表する英文学の学会である日本英文学会第90回全国大会のシンポジウム第3部門「ナショナルなものの(再)想像ーースコットランド、アイルランド、ウェールズ、イングランドの300年」でスコットランドを代表して講師を務めたことである。服部は「ユニオンの行方――James Hoggの解体していく罪人」というタイトルで発表を行い、シンポジウムの議論に参加した。James Hoggという一見極めてリージョナルな作家の中にも「地理学的想像力」は極めて大きな力が働いており、イングランドを対局に見据えながら、イングランド・スコットランド合同(1707)という歴史的事実に直接触れないにもかかわらず、「移動と地政学」のせめぎ合いがこの小説の中核を成している事実を指摘した。 また、その実績を論文にした。「待兼山論叢」第52巻に発表した「ユニオンの行方――ジェイムズ・ホッグの解体していく罪人」は口頭発表を基に加筆・訂正を行ったものである。今回初めて取り組んだこのJames Hoggという作家については引き続き研究を続けていきたい。 研究初年度である本年は基本図書や資料を収集するために国内外に出張を行った。残りの2年間に研究すべき重要な資料を入手することに成功した。例えばアメリカ出張においてはメソディズムの始祖の1人であるWhitefieldのアメリカ旅行記であるA continuation of the Reverend Mr. Whitefield's journal, from a few days after his return to Georgia to his arrival at Falmouth, on the 11th of March (1741)を調査し、イギリスとアメリカで18世紀に活躍した宗教者の地理学的想像力について貴重な成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
極めて大規模な学会である日本英文学会全国大会のシンポジウムに参加して本課題に関する発表と議論を行うという実績は当初計画では最終年度に総括として行う予定であったが、それが初年度に実施できたことは大きな成果であった。しかもそれを年度内に活字にすることができ、大きな一歩を踏み出すことができたと考えている。また国内外への出張では貴重な資料を得ることができて、2年目以降の研究の素地を固めることができた。これらの理由により、当初の計画以上に進展していると言うことができるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き海外に出張し、資料収集に留まらず、イギリス人の旅人(例えばJames Cook)などの旅が今日の文化・社会においてもどのような影響力を残しているのかについての調査も行いたい。また、2019年度には4年に一度開催される国際18世紀学会がエジンバラで開かれるので、参加して議論に加わる予定である。また2019年は『ロビンソン・クルーソー』出版の300周年の年である。可能なら『ロビンソン・クルーソー』が代表する冒険譚の「移動と地政学」について啓蒙を行い、他の研究者と議論を交わすことができればと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度の国際18世紀学会がエジンバラで開催される。長い期間の学会であるため、多額の予算が必要されることが予想されるため、そのため次年度使用額を残しておく必要があった。次年度使用額はすべて国際学会出張に使用する計画である。
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