2022 Fiscal Year Annual Research Report
Intimacy between Women in African Novels
Project/Area Number |
18K00373
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大池 真知子 広島大学, ダイバーシティ研究センター, 教授 (90313395)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 英語圏文学 / アフリカ / ジェンダー / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アフリカ社会における性をめぐる政治学を文化戦争の観点から整理するとともに、文学作品での性の表象を明らかにした。 アフリカでは、性の多様性の課題が文化戦争の様相を呈している。つまり、保守派が、同性愛はアフリカの伝統に反すると主張し、国によっては同性愛の厳罰化が進む一方、欧米政府はこういった動きを批判している。この政治的な背景を文献調査して、以下の内容を日本の研究者と共有した。アフリカの歴史学と文化人類学の研究により地元での多様な性の実践が明らかになっていること、同性愛嫌悪はむしろアメリカの福音派により宣伝されていること、とはいえ、欧米の政府が援助と引き換えに性の多様性尊重を求めることは地元で反発を呼び、同性愛が欧米由来だという感覚を強化していること、である。一方で、ウガンダとケニヤでの現地調査では、性愛が、命を生むスピリチュアルな結合として聖化されていることも明らかになり、「LGBTはアフリカの伝統に反する」という主張が人々に受入れられるのも理解可能であることも明らかになった。このようなことから、アフリカにおける性の多様性を尊重する運動は、欧米の人権思想だけでなく、アフリカの文化、宗教性、社会運動の歴史に根ざしたアフリカの哲学に基づく必要があると結論づけられた。 さらに、アフリカの状況を日本のLGBT関連の法制度の議論と比較して、性と社会と個人の関係(性のあり方は個人が自己決定すべきか、社会の規範が決定すべきか)が問題化されていることも明らかになった。 一方、アフリカ文学では2000年代から、黒人女性作家が性愛を大胆に表象し始めると同時に、黒人男性作家が同性愛を作品化し始めた。2010年代には、多様な性はアフリカ文学の中心的なテーマとなった。そこでは、欧米的なLGBTQのアイデンティティポリティックスには合致しない流動的な性が表象されていることが明らかになった。
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