2020 Fiscal Year Research-status Report
大学と社会――19世紀中葉以降のアメリカ大学小説から現代を逆なでに読む
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18K00375
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
大野 瀬津子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (50380720)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大学小説 / 南北戦争小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 2021年6月30日~7月2日にスペインのコンプルテンセ大学で開催される「第19回人文科学の新しい方向性についての国際会議」(Nineteenth International Conference on New Directions in the Humanities)で予定している口頭発表の準備を進めた。「南北戦争小説『二人の学友』における共同体の構築」“Building a Community in a Civil War Novel, Two College Friends”というタイトルの下、南軍と北軍の双方に対する主人公Nedの忠誠を共同体構築の試みとして読み解く予定である。2020年度中に発表原稿の大半を完成させた。 2. 2018年度に口頭発表した三つの小説―ハリー・ヘーゼル作『ボストンの美女―あるいはケンブリッジのライバル学生たち』(1844)、ティム・ウィッパーウィル作『ネリー・ブラウンー試練、誘惑、そして大学生活の喜び』(1845)、チャールズ・ベイリー作『矯正された学生―ある大学生活の物語』(1844)―について、論文を執筆した。これは19世紀中葉のアメリカの大学で影響力を振るっていたモラル哲学の思想を参照枠に据え、道徳的人格養成機関としての大学の有用性を問うテクストとして、三作品を考察するものである。投稿する段階まではいかなかったものの、かなりの程度まで進んでいる。 3. 2020年12月6日にオンラインで開催された第43回大学史研究セミナーに参加し、国内外の大学史研究の現状について理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の拡大に伴い、勤務校の授業がオンラインに切り替わった。このため自身の授業準備に加え、組織的な対応も迫られることになり、研究に十分な時間を割くことができなくなった。口頭発表や論文等の成果を残せなかったという点で、当初の計画よりもやや遅れていると判断した。しかし、限られた時間のなかでも、2021年度に国際会議で口頭発表予定の原稿、および19世紀中葉に出版された三つの小説についての論考を、かなりの程度まで進めることはできた。大学史研究セミナーに初めて参加したことも大変有益であった。こうした取り組みの成果は、2021年度以降に順次公表していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は『二人の学友』について国際会議で口頭発表するとともに、加筆修正した原稿を論文にまとめ、査読付き学術誌に投稿する。19世紀中葉の三小説について執筆中の論文も、査読付き学術誌に投稿する。 2022年度は本研究の最終年度となるので、大学研究や大学史研究の専門家を講師に招き、一般市民も参加できるシンポジウムやセミナーの類を開催する。そのなかで『フェア・ハーヴァード―アメリカの大学生活の物語』(1869)について、自身の口頭発表もしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大のため、2020年7月に予定されていた「第18回人文科学の新しい方向性についての国際会議」(Eighteenth International Conference on New Directions in the Humanities)の現地開催がなくなった。同じ理由でアメリカの大学図書館で資料を収集することもできなくなった。このため、予定していた海外出張費が不要となった。コロナ禍が収束しない可能性を見据え、2022年度は、大学研究に関わるオンラインのシンポジウムやセミナーを複数回開催し、招聘講師への謝金を計上する案を検討している。
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