2018 Fiscal Year Research-status Report
ヴィクトリア朝期の写真術と文学とラファエル前派主義芸術の関係性に関する研究
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18K00377
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
吉本 和弘 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (90210773)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 写真アルバム / ルイス・キャロル / ラファエル前派芸術 / オスカー・グスタフ・レイランダー / ジュリア・マーガレット・キャメロン / クレメンティーナ・ヘイワーデン / アレキサンダー・マンロー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度には、それまで蓄積してきたルイス・キャロルの写真及びアルバムの資料調査の結果として県立広島大学総合教育センター紀要第4号に研究論文「ルイス・キャロルの写真アルバムA[X]について」を発表した。この論文はその前の2年間に県立広島大学人間文化学部紀要に連続して発表したルイス・キャロルの写真アルバム[VI]と[AIII]についての研究論文にの続編となる位置付けの内容であり、これらはテキサス大学での資料調査に基づいている。これらをまとめ、キャロルの写真についての著作にするべく準備中である。 本年度内に予定していたイギリス、ロンドンのヴィクトリア・アルバート・ミュージアムやナショナル・ポートレート・ギャラリーでの一次資料調査は、年度末の3月に行うことができた。この調査では主にジュリア・マーガレット・キャメロン、ヘンリー・ピーチ・ロビンソン、そしてレディ・ヘイワーデンの作品について調査した。このとき、写真資料に加えてラファエル前派の絵画についても関係する作品をできるだけ実際に見るため、バーミンガム美術館、マンチェスター美術館などで調査を行った。また、ラファエル前派の絵画理論の後ろ盾となったジョン・ラスキンに関係する展覧会が行われていたので、ロンドンのテンプル・プレイスとヨーク美術館にて鑑賞することができた。またシェフィールド美術館が所蔵するラスキン・コレクションについても資料調査を行うことができた。しかし、期間を十分にとれななかったこともあり、オックスフォード大学、リバプール美術館、ランカスター大学のラスキン・センターなどの資料を調査することができなかった。 ヴィクトリア朝期の写真術に関する文献等はかなりのものを集めることができている。これらを参考にし、あるいはまとめて、論文あるいは著書としての構成を考えて執筆を進めたいと考えているが、その点においては少し遅れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査対象となる資料がかなり膨大なものであり、かつ、様々な場所、速にアメリカ国内及びイギリス国内、に分散しているため、短期間の調査で全てを見ることがなかなか難しい。とはいえ、今回の助成期間よりも前の期間に長年行ってきた資料調査を加えた場合、資料調査の結果はかなりの量が蓄積されており、これらを著書としてのまとまった内容に仕上げてゆくことと、残りの資料調査を並行して行って行きたいと考えている。しかしながら、写真そのものに関する考察に加えて、絵画と文学における写真の影響というテーマは、なかなか捉えることが難しいと感じており、文学とその挿絵といった分野についても視野を広げる必要も感じており、むしろ研究の範囲が広がってしまっている感がある。これを再度絞り込んでゆくことが必要であり、その辺りのテーマの取捨選択をしてゆかなければならないと考えている。 一方で、勤務校における大学改組やカリキュラム改革の影響による人員削減などのあおりを受け、本務の仕事が繁忙になっており、なかなか研究と執筆の時間が取れていないというのが実情である。
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Strategy for Future Research Activity |
31年度の調査の予定としては、キャロルやキャメロンの資料の現地調査として、アメリカのプリンストン大学、ニューヨーク大学、ニューヨーク市立図書館、メトロポリタン美術館、モーガン図書館、ローゼンバック博物館、ゲッティ・ミュージアム、そしてテキサス大学オースチン校などがある。これらの施設をできるだけ回って資料調査を行いたいと考えている。また、これまでヴィクトリア朝期の写真術の方にかなり比重を置いて資料調査を行ってきたが、今年度はよりラファエル前派の芸術家と写真の関連性、またヴィクトリア朝期の文学のテーマと芸術写真と呼ばれる作品の関連性、また、文学作品への挿絵と写真の関係性などについての考察を深めてゆくための資料を探ってゆく必要があると感じており、調査する場所や内容についても開拓してゆく必要があると考えている。そして集めた資料をもとに考察を論文の形にしてゆくことが重要であり、集めた文献の整理とまとめ、それらをもとにした考察を論文の形にまとめてゆく作業により多くの時間と労力を傾注したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2018年度に科研費助成が決まって以後に、勤務校の海外研修制度に応募し、2019年度に最大6ヶ月の在外研修を行う予定を立て、それがほぼ実現するとの見込みのもとで、2018年度には調査旅行を控えることにしたので、初年度に使用する予定にしていた研究費をかなりの部分翌年にまとめて使用するような計画に変更した。ところがほぼ決定と言われていた在外研修への申請が最後の最後に却下されてしまったため、年度末の3月に短期間で調査旅行に出たが、思うような時間が取れなかったため、結果的には2018年度に使った研究費の額が最初の計画よりも少なくなった。よって、2019年度には、前年度に実施できなかった調査活動を夏休み時期に実行したいと考えており、そこで前年度に使用しなかった研究費用を使用して長めの調査期間を使って資料調査等を行いたいと考えている。特にアメリカ東海岸地区に存在する写真関連の資料の調査と、イギリスの美術館関係にあるラファエル前派の絵画、そして文学関係の文献史料を調査したいと考えている。
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