2019 Fiscal Year Research-status Report
ヴィクトリア朝期の写真術と文学とラファエル前派主義芸術の関係性に関する研究
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18K00377
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
吉本 和弘 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (90210773)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラファエル前派 / 写真術 / ルイス・キャロル / O. G. レイランダー / ジョン・ラスキン / レディ・ヘイワーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の調査とこれまで集めた資料を元に、10月26日に日本ルイス・キャロル協会の大会で「ルイス・キャロルとO. G. レイランダー」と題して研究発表を行った。「写真の父」と呼ばれるレイランダーとキャロルの交流を検証し、レイランダーが中心となっていた絵画的写真の技法がいかにキャロルの写真に影響を与えたかを考察した。今年度中に論文化を予定している。 11月1から14日まで、絵画、写真、文献の一次資料などを収集するための英国出張を行った。調査箇所は、ナショナル・ギャラリー、ナショナル・ポートレート・ギャラリー、テート美術館、ギルドホール美術館、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館・図書館、大英図書館(以上ロンドン)レディ・リーバー美術館、ウォーカー美術館、テート・リバプール美術館(以上リバプール)、ランカスター大学ラスキン・センターである。これらの場所でラファエル前派の絵画、写真、彫刻等の実物を見ることが出来、また美術評論家ジョン・ラスキンの写真と絵画に関係する貴重な資料を多数視察および収集することができた。これらの資料を元に、さらに研究を進めることができると考えている。 またロンドン滞在中に、会員となっている英国ルイス・キャロル協会の年次大会に出席し、英国のルイス・キャロル研究者との交流を持つことが出来た。特に前ルイス・キャロル協会の秘書であったマーク・リチャーズ氏との交流では、個人蔵のキャロル関連資料を拝見することが出来、また様々な助言を得ることが出来た。 日本ルイス・キャロル協会のメンバーを中心として、キャロル研究者として世界的に知られるエドワード・ウェイクリング氏の著作、Lewis Carroll: The Man and His Circle, 2015,を共同翻訳し、その中の「写真家」の章を担当したが、この著作が2020年3月に小鳥遊書房より出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに集めた資料により、ルイス・キャロルの写真アルバムなどについての整理はほぼ完了し、それについての論文も一通り書いたのだが、予定ではジュリア・マーガレット・キャメロンの写真とキャロルの関係についても論文執筆を進めるつもりであった。キャメロン関係の資料も、ある程度蓄積してきたが、十分に研究が進んでおらず、まだ論文の形に出来ていない。レディ・ヘイワーデンの写真についても資料はある程度集まったが考察はまだまだという状況にある。その前にO. G. レイランダーとの関係、またジョン・ラスキンの美術理論の影響について考える必要が出てきたからという理由もあるが、この二人についての資料をこれまで十分に見て来られなかったという事情もある。今年度は、ラファエル前派の絵画を実際に見ることに焦点を当てることに時間をかけたという状況もある。また、研究の過程で、そのあたりの不足を補うため2020年の春休み期間にも調査出張をしたかったのだが、コロナウイルス問題の世界的広がりによりイギリス出張は困難になり、渡英の予定が全く立てられない状況にある。本来考察の焦点を絞ってゆくべきとも言えるが、この際、周辺部分の研究も必要だということで調査の範囲を広げる必要性も感じており、そこは一つのジレンマとなっている。これらの事情により、最終年度に向けて、執筆に集中することができるかどうか微妙な状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでカバーできていない資料を調査するための調査出張ができるかどうかは、コロナウイルスの問題が収束するかどうかにかかっているのでなんとも言えないので、足りない部分は置いておいて、とりあえず執筆活動に本腰を入れていきたい。その為には、これまで集めた資料の整理とさらなる調査が必要になるので、まずはそこを急ぐ必要がある。執筆を進めながら、未調査の資料について整理して、その部分はネットでの調査で済ませなければならないかもしれないが、なんとか今年度中に研究の成果を出して、次年度中に出版に漕ぎ着けられるよう、に努力するつもりである。出張が可能となった段階で、できればアメリカ(ニューヨーク大学、ロスアンゼルスのゲッティ・ミュージアム、テキサス大学ランサムセンターなど)にある資料、イギリスで未調査の部分(オックスフォード大学等)についての調査をかねて、英国ルイス・キャロル協会または北米ルイス・キャロル協会、その他適当なところでの発表機会を作って、研究成果を公表してゆきたい。
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Causes of Carryover |
2020年3月にも調査のための出張を予定していたが、コロナウィルス禍の世界的拡大により渡米、渡英が困難な状況にあり、計画が中断している。また研究の方も少し遅れており学会発表のための出張も先延ばしとなっているのが現状である。状況をみて、今年度中に調査のための出張を実行できればしたいと考えているが、延期せざるを得ない可能性もある。その場合、研究機関の延長も検討する必要があるかもしれない。
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Research Products
(3 results)