2022 Fiscal Year Research-status Report
ヴィクトリア朝期の写真術と文学とラファエル前派主義芸術の関係性に関する研究
Project/Area Number |
18K00377
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
吉本 和弘 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (90210773)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 写真の出現 / ラファエル前派芸術 / ルイス・キャロル / O. G. レイランダー / J. M.キャメロン / レディ・ヘイワーデン / 19世紀イギリス文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018, 2019年度は、調査研究に基づいて、ルイス・キャロルの写真とラファエル前派の絵画の関係性や、O. G. レイランダーとキャロルの関係性についての論考をまとめた論文を発表してきた。これらの論文は、主として資料の整理と個別の写真家、または写真収集者の研究としてまとめたもので、研究課題全体の成果の一部となる予定のものである。2020年4月以降ほぼ3年間、コロナ禍によって英国、米国等での資料調査等ができなかったこと、また勤務校におけるコース長という任務のエフォートの割合が増大したことにより、研究活動は停滞していた。その影響で研究期間を延長させてもらい、それまでに集めた資料の整理と、論文へのまとめの作業を継続してきた。 2022年になり、それ以前に調査収集した資料に基づいて行った研究発表を元に、論文「J. M. キャメロンの写真によるA. テニソンの『『国王牧歌』の視覚化について」を県立広島大学地域創生学部紀要に発表することで、研究活動を前進させることができた。これも写真という媒体とラファエル前派の芸術理論の関係性を考察するための一つの個別事例であり、この研究を総括する際の重要な一部となる予定である。 2023年度には、主として英国での資料調査を再開し、この研究の総括を行いたいと考えている。この科研を取得する以前のテーマであったアーサー・マンビーの労働者女性の写真コレクションについての研究と、未だ論考は発表していないがレディ・ヘイワーデンの写真の研究も含めて、写真の出現が当時の芸術理論としてのラファエル前派の絵画に与えた影響、人々の視覚メディアへの関心の変化、そしてさらに写真が19世紀イギリス文化、または当時の人々の意識そのものに与えた影響を明らかにするというテーマで、これまでの研究を総括した著書の執筆に結実させたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年4月以降の全世界的な新型コロナ・ウィルスの流行により、英国、米国への資料調査がほぼ3年間、全くできなかったことによって研究活動が全体として停滞してしまった。まだ同時期に、勤務校、県立広島大学地域創生学部地域文化コース長という任務をはたす必要に迫られ、そのエフォートの割合が極度に増大したことにより、研究活動は停滞していた。その影響でこの研究課題の期間を2度にわたって延長させてもらうことによって、その間はそれまでに集めた資料の整理と、論文へのまとめの作業を継続してきた。2023年度になってようやくコロナ禍が収束の兆しを見せ、海外渡航にもほぼ障害がなくなってきたので、資料調査を再開し研究に区切りをつけ、その成果を発表してゆく活動により力を入れてゆきたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目の研究費用として、2年間使用せずに延長してきた研究費を活用し、英国、可能ならさらに米国での資料調査を行いたいと考える。ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム所蔵の資料を初め、その他ラファエル前派芸術を所蔵する美術館、資料館などに散在している資料の調査を終え、大英図書館などでの19世紀当時の文献調査や、最近の研究成果の吸収にも力を入れてゆきたい。それらの成果と、これまでに発表した論考をまとめ、写真の出現と19世紀イギリスの芸術の大きな流れとしてのラファエル前派の芸術活動との関連性について、まとまりのある著作として文章化し、一つのまとまった書物の形にできればと考えている。また、可能であれば、写真の出現と19世紀絵画芸術の関係性について、広く世の中に意識してもらうための美術展の企画についても検討している。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ・ウィルスの世界的流行による海外渡航の制限により、研究費用の主たる使用目的である英国、米国などでの資料調査等の研究活動が行えなかった。2023年度は新型コロナ・ウィルスの収束に伴い、海外渡航に制限がなくなったため、予定していた資料調査等を再開し、これまでの研究成果と合わせた研究の総括を行い、成果の発表に向けての活動を本格化させる予定である。
|
Research Products
(1 results)