2020 Fiscal Year Research-status Report
ディアスポラの文学──サン=ドマングからアメリカへ
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18K00384
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
庄司 宏子 成蹊大学, 文学部, 教授 (50272472)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 建国期アメリカ文学 / 奴隷制度 / ルイジアナ購入 / ディアスポラ / レオノーラ・サンセイ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年に共著本として出版した『国民国家と文学』以降、文学をめぐる捉え方が、国民文学から世界文学へと変換を遂げつつある現状のなかで、本研究テーマのディアスポラの文学は両者の視点とどのように関わるか、理論的な枠組みを考えることが重要だと思っている。16世紀以降の西洋によるアメリカス(南北アメリカ)の植民地化と奴隷制度の歴史と深く関わるアフリカン・ディアスポラ文学は、双方の視点をもつことが要請されるだろう。植民地化と奴隷制度の問題は国境を越えた共有のテーマを有すると同時に、個々の国民国家のなかの制度や文化のもとで、国民国家の公的な歴史記憶の構築と忘却と関わりながら生み出される。そうした視点から18世紀末から19世紀初頭の建国期アメリカ合衆国から国境のセキュリティ上に危機に直面する 時代に描かれたLeonora Sansayの小説Laura, by a Lady of Philadelphia (1809)およひThe Zelica, The Creole; A Novel (1820)を考察したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で取り上げる小説の執筆者Leonora Sansayは、18世紀末の仏領植民地サン=ドマングにおける奴隷反乱を当地に滞在し、その体験を後のアメリカ副大統領Aaron Burrに書き送った人物であり、その文学の視野は当時フランス領であったルイジアナをめぐる状況と深く関わるという地政学的視野を有している。現在、紙媒体で入手できないレオノーラ・サンセイの文学をマイクロ資料としてUCバークレーで入手することができたため、今後研究を有意義な形で進めることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Leonora Sansayの知られざる小説Laura, by a Lady of PhiladelphiaおよびZelica, The Creole; A Novelを読み解き、論文を執筆したく思っている。昨今の文学研究で重要な枠組みとなっている世界文学的な視野と国民国家が文学的想像力に及ぼす影響に関して、理論的な精緻さを追究したいと思っている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、国内・国外の学会が開催されず、また海外の図書館への資料のリサーチを行うことができなかったため、次年度使用額が生じている。今年度も状況は大きく変化しないかもしれないが、Webで開催される学会や研究会に参加して知見を得るとともに、必要な書籍を購入することで研究を遂行したく思っている。
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