2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00385
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
伊藤 淑子 大正大学, 文学部, 教授 (50223201)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカン・ルネサンス / フェミニズム / マーガレット・フラー / 19世紀アメリカ文学 / 女性の言説 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は本研究の中心であるマーガレット・フラーの伝記的情報をさらに収集し、分析するともに、アメリカルネサンス期の女性作家の一次資料、二次資料を読みこんだ。その成果を総合的にまとめるところまではいたらなかったが、延期になった学会での発表なども含め、2021年度にもちこして、研究の成果の発表に努める予定である。 『女性学』(日本女性学会学会誌)第28号で、「権利へのストラグル」と題して特集記事の企画と編集を行い、2020年に100周年を迎えたアメリカ女性参政権について論じた。 PAMLA( Pacific Ancient and Modern Language Association)の年次大会で発表予定であったエリザベス・ストダードとマーガレット・フラーの比較研究は、学会の開催が延期されたため、2021年度の発表に備えて執筆した。 1848年のイタリア統一のための革命に遭遇したマーガレット・フラーが海外特派員報告として執筆した『ニューヨーク・デイリー・トリビューン』紙の記事などを手掛かりに、アメリカで十分に自己を表現する機会を得たと実感することのできなかったフラーが公私の抑圧を逃れ、共和制を目指すイタリアの騒乱のなかに新たな自己の発揚を見出したことを論じる論文は、2021年度秋に出版されることになっている。女性であることによる制約を受けざるをえなかったフラーにとって、エマーソンやソローが論じるトランセンデンタリズムは現実から乖離した理想であり、アメリカを離れ、イタリアでようやく自己の完結性を実現しようとしていたことを論じる。 オンラインで行われた研究会には積極的に参加し、中間的な研究報告にも努めた。実際に会って議論を交わすことのかなわなかった2020年度ではあるが、研究のネットワークに支えられ、たくさんの啓発を受けた。それも含めて、2021年度に本研究の成果をまとめていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、発表を予定していた学会も延期や中止になり、アメリカでの研究調査もあきらめざるをえず、授業のオンライン対応などにも時間をとられ、研究を計画通りに進めることが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、本研究の成果のまとめを積極的に行いたいと考えている。研究の成果のとして論文をアメリカルネサンスの文学を論じる論文集で発表する予定である。また、アメリカにおける学会発表を録画または原稿代読で予定している。さらにマーガレット・フラーの伝記の翻訳を出版するなど、これまで日本で一般に知られていない作家や作品への広い理解の促進に努めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大を受け、海外出張を取りやめたため、旅費の支出がなかった。この状況はしばらく続くことを考え、現地に行かずとも有効な研究ができるように研究方法や学会参加の方法を考えていきたい。2020年度に経験したことを活かし、研究者同士のネットワークにも頼りながら、オンラインでデータベースを活用するなど、研究をより成果のあるものにしていきたい。
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Research Products
(1 results)