2018 Fiscal Year Research-status Report
Symbiosis through growing network by apropriations and repetitions
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18K00387
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
虎岩 直子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (50227667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文学と視覚表象 / ポストヒューマン / 芸術の倫理 / アイルランド / シネード・モリシー / 借用 |
Outline of Annual Research Achievements |
30年度は半年間の海外研究許可を職場から許可されて、4月から6月末までと9月末はオーストラリア・クイーンズタウン大学を拠点として、The Legend of Ned Kellyのヴァリエーションについて、口承、漫画、Sidney Nolan作品を初めとする様々な視覚表象資料を取材して、Peter CareyのTrue History of Kelly Gangs (2005)が一節をなすリゾームの広がりを検証する作業を進めた。滞在期間中、ノーランの作品取材にシドニーの国立美術館に出張した際、ケリーギャングシリーズ以外のノーランの作品、その他のヨーロッパ系オーストラリア人の作品に見られるヨーロッパ文化とオーストラリアという土地の「接合」をどのように表象するかという葛藤を目の当たりにして、ますます当該研究の広がりと深度を確認した。さらに、土地自体をヨーロッパ化する(公園などの設立)、そしてヨーロッパ化した中に他者の土地を取り込む(公園の中に熱帯雨林を植え込む)などを観察して、他者との接合の倫理についての分析材料を集めた。 7月から9月までは、ヨーロッパ地域で資料収集した。研究経過は、本研究者が毎年参加発表している国際アイルランド文学学会(30年度はオランダ、ナイメーヘン大学)と隔年開催でここでも継続的に発表している国際英語文学学会(30年度はLjubljana大学,Slovenia)で発表して、研究者と意見交換した。前者では、政治・環境に様々な問題を抱えている現代社会で芸術家が担うべき役割、芸術の倫理、について、ポストヒューマニズを念頭に置きながら論じた。後者では、具体的なフォーム、文学作品のマテリアリティの重要性を強調しながら、他のマテリアルとの接合を通して新しい視点、新しい関係を生み出していくことの重要性を示唆するシネード・モリッシーの詩を分析したが、これは昨年出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シネード・モリッシーの詩作品が「借用」する絵画・映画・テレビ・ブログ上の表象物、及び読者との間に生成していくネットワークの意味を環境倫理への広がりを考慮しながら明示する、という点については、この一年で3つの国際学会に参加発表し、異なった視点から分析発表したので、概ね順調に進展していると言える。 オーストラリアのKelly Storyの、特に視覚表象への広がりについては、「事件」発覚当時から新聞の挿絵で扇情的に表わされたり、早い時期に映画化されていることなどは取材したがl、かなり研究が進んでいることを確認した。 日本の作品については、 現代視覚芸術作品に通じる共通項を取り出して展示している「六本木クロッシング」の2019年総合テーマが「つないでみる」ということからもわかるように、日本でも他者とのコネクションから生まれる新しい可能性を表象していくことへの興味は強まっている。作品取材は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は「借用による他者との共生」であるが、その倫理はポストヒューマニズム的パースペクティヴを導入すると、さらに学際的に見通せるということが、2018年度の取材と研究を通して確認できた。今後は、主要な分析対象は文学作品と視覚芸術作品ではあるが、ロボット、 AI,そして環境問題にも関わる広いネットワークを意識して緩急を進めていく予定である。 例えばオーストラリアの状況についても、ケリーギャングにとどまらす、オーストラリアの動植物、大地、海、自然物や伝統的な視覚表象記号と、現代の文化表象との結合を積極的に、様々な領域に見ていきたい。
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Causes of Carryover |
2018年度3月の出張で当該年度の助成金は使用済みであるが、3月の決算書が、クレジットカード詳細の遅れなどから、まだ済んでいないのが、次年度使用額が生じている理由である。したがって、実質的には本年度分は消化済みである。
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Research Products
(6 results)