2019 Fiscal Year Research-status Report
Symbiosis through growing network by apropriations and repetitions
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18K00387
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
虎岩 直子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (50227667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 借用 / ポストヒューマン / 芸術の倫理 / アイルランド / 視覚芸術と文学 / シネード・モリッシー / 境界とネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は5月末にモントリオールのコンコーディア大学で開かれたアイルランド文学学会カナダ支部の学会に招かれて研究発表を行った。学会の総合テーマは「文学と身体」で、当該研究者は、文学テキストのボディ(文字で表現された形、文学形式)と人間の身体を含む物理的な世界との連動について論じた。世界全体を一つのボディと見て、そこに内在するここのボディの関係が全体のバランスと深く関わる、という論旨で、本研究課題の「共生」と繋がっている。 続いて6月の初めに関西大学で開かれたポストヒューマニズムについての国際学会に参加発表した。昨年の「今後の研究の推進方策」で、本研究が目指す倫理はポストヒューマニズム的マースペクティヴを導入すると、さらに学際的に見通せると想定した。この度の国際学会では、ロボットや AI、ファッションやデザイン、環境哲学、などなど、様々な分野の研究者が集まり、ゲストとしてはポストヒューマニズムを先導して来たロジ・ブライドッティ が講演し、彼女とも意見交換を行い実り多いものであった。 7月末は本研究者が所属している国際アイルランド文学学会の大会がアイルランド共和国のダブリン、トリニティカレッジで開催された50周年記念大会に参加発表した。総合タイトルはCritical Groundで文学と批評が現実世界を変えうる可能性が議論された。当該研究者は文学・芸術における「迷路」のコンベンションを分析して、現実世界の混迷を解く手がかりとしての文学の可能性を論じた。 10月は国際アイルランド学会日本支部でのシンポジウムの司会・発表が計画されていたが、関西地方を襲った強い台風の影響で学会は中止になった。しかし、Border Crossingという総タイトルのもと、UKのEU離脱など、世界で新たな「境界線」が引かれ始めている状況での、芸術によって境界を超える試みについて論じる予定であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年に引き続き、年に3-4回の国際学会への参加と発表によって、当該研究者の現課題研究は十分に露出されている。特に本年度は、昨年に計画したポストヒューマニズムの枠組みを使って当該研究が目指す芸術作品が世界に持ち得る倫理的な役割についての考察を発表することができた。また当該研究が積極的に扱う視覚芸術と文学作品の借用関係についても論文を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、北アイルランド出身の詩人モリッシーの詩作品が「借用」する絵画・映画・テ レビ・ブログ上の表象物、及び読者との間に生成していくネットワークの意味を環境倫理へ の広がりを考慮しながら明示することが、中心作業であった。それは初年度本年度の合計6つの国際学会発表で着々と勧められている。最終年度にあたる本年度は10月にイギリスとアイルランドから文学実作者と批評家を招いてシンポジウムを一区切りのシンポジウムを開催する予定であったが、新型コロナの蔓延によって来年度へ順延となった。また、研究者が所属している国際学会も中止が相次いでいる上、夏季休暇中の資料収集と意見交換を目的とする出張も行えない可能性が大きい。現段階では出張は冬季休業と春季休業中に行う予定である。本年度は、後半に予定していた論文作成を先に行い、出張は、本研究課題と次にポストヒューマニズム的視野を広げる研究への橋渡しのために後半にまとめて行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度に行った夏季出張について、宿泊費が足りなくなった。
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