2021 Fiscal Year Research-status Report
Symbiosis through growing network by apropriations and repetitions
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18K00387
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
虎岩 直子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (50227667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 借用 / 視差 / アイルランド現代詩 / 視覚表象 / シネード・モリッシー / 環境との共生 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、「文学」と他の文化表象の借用関係を分析するという方法で、多様な個人および多様な共同体が「視差的視線」のもとに世界を眺めている状況を露わにすることである。「視差」を認識することによって、それぞれ絶対にひとつにはなり得ない他者同士(人間社会と人間を含む環境も含む)が互いの視点を尊重し、バランスの取れた共生を築く可能性を探る。 本年度は、所属国際学会大会がポーランドのウッジ大学主催オンラインで開催され、当該研究者は口頭発表を行った。一年順延された学会の総合テーマは2020年1月に実行されたBrexitを念頭に、’Creative Borders’(創造的境界)であったが、テーマ設定の際には予期されていなかったCovid-19の蔓延により、さらに他者間の距離、孤立、「動物」と「人間」、「病気」と「健康」の際立った二項対立意識などが浮上してきたため、「境界」という観念と物理的存在についての再考は実り多いものであった。 本研究者は ‘Poetry and Art’セッションで北アイルランド出身イングランド在住の詩人Sinead Morrisseyの作品に見られる「境界」の意識と、「境界」が分かつ領域のバランスについて論じた。異なった領域がバランスを取っている状態とは一種の停止状態であり、稀な状況のもと、短期間にしか達成されない。異なった領域は「境界」の位置を絶えず変えながら不均衡から均衡状態を目指すのだが、著しい不均衡が出現したとき、たとえばこの度の感染症のような状況の出現により、概ね均衡が保たれているとされていた常態が抱えていた様々な問題が露わになる。この度の口頭発表ではモリッシーのOn Balanceという詩集を取り上げて、「病気」などによる不均衡の視線が表層的なバランスの虚構性を暴き、たえず中心を変えながら、他者とのより豊かな共生の可能性を示唆すると論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究は期間限定のパフォーマンスを含む視覚文化表象と「文学」との「借用」による「視差的視線」を取材分析することによって、他者との共生の道を示唆することを目的とする。ゆえに当該研究者の専門領域である英語圏、ヨーロッパ地域、オーストラリアでの取材を計画していたが、新型コロナウィルスの蔓延により予定していた出張が全て不可能になった。 また、当該研究の最終年度には海外から実作者(文学者および視覚芸術作品製作者)と研究者を招聘してシンポジウムを開催する予定であったが、新型コロナウイルスの蔓延により不可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス蔓延のためヨーロッパ、オーストラリア、カナダ、など当該研究が予定していた資料収集地への出張は不可能であったが、本年度は2年ぶりに出張可能になる見通しである。夏季休暇中には国際学会参加発表をかねて学会開催地のアイルランドで研究者や作家たちとの意見交換を予定している。また、イギリス、ドイツなどに出張して、当該研究スタート時点ではなかった新型コロナウィルスの影響とウクライナでの戦争を間近にしているヨーロッパ地域での、他者との共生の試みが実際どのようなかたちを日常生活のレヴェルで呈しているか観察資料収集して継続科研課題「ポストヒューマン時代の芸術が探る環境世界のバランスと共生への地図」とも関わるポストヒューマン的世界観を背景にした共生の問題研究につなげていきたい。 また、「研究実績」の項目では説明するスペースがなかったが、当該研究の予算を使って、当初予定していなかった「病気と芸術」というシンポジウムを昨年12月に行って成功を収めた。まずはその研究成果として、登壇者全員が関わる著書を出版し、一般への意識啓発に務める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延により、予定していた海外出張と、当該研究課題最終年度に予定していた海外から研究者と実作者を招聘して開催する国際シンポジウムが実現できなかった。 本年度の使用計画としては、今の時点では可能である海外出張経費および収集資料整理のためのPC周辺設備として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)