2022 Fiscal Year Annual Research Report
Symbiosis through growing network by apropriations and repetitions
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18K00387
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
虎岩 直子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (50227667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 現代アイルランド文学 / 自然と人間の共生 / シネード・モリッシー / 病気と芸術 / 借用 / 沈黙と文学 / エコクリティシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず7月末に、アイルランドのリムリック大学において3年ぶりに対面で開催された国際アイルランド文学研究会学会に発表参加した。学会総合テーマは ‘Intersectionality (交差性)’で、「交差性」という概念装置が目指す「様々な差別の脱周縁化」を考察することは、差別の根源である他者同士の「共生」を目指すという当該研究のテーマと大いに重なるところがあった。本研究者は、 ‘Ecocriticism’のセッションで、自然を他者化してきた人間中心的視線の問題点を反省的に意識する姿勢を、現代アイルランド詩人Sinead Morrissey作品を分析して示した。 10月にはオンラインで開催された国際アイルランド文学学会日本支部大会における ‘Silence and Literature’というシンポジウムに参加した。人間的言語を持たない自然と人間(本来は自然の一部)は古来危うい関係にある。両者のアンバランスを表出し、同時にバランスのとれた共生を望むという姿勢は人間の普遍的姿でもある。その表出の系譜を古典を「借用」しながら、環境問題に脅かされる現代に新しい形で示している例を、現代アイルランド詩のなかに探った。 12月には、前年度に当該研究費で開催したシンポジウム「病気と芸術」を書籍として出版した。当該研究は当初から、性的他者、文化的他者などなどの様々な他者のさきに、人間が他者化してしまった自然と人間の「共生」についての考察を目的としたのであった。その問題が新型コロナウイルス感染症蔓延によって前景化されて、「病気」によって露わになった環境世界との新たな共生の必要性をも視野に入れた「芸術」の力を強調したシンポジウムであった。研究者のみならず一般読者をターゲットとした書籍を目指し、本研究者の専門領域外の日本文学や美術研究者も招き、実り多い研究成果となったと確信する。
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