2018 Fiscal Year Research-status Report
The Third Race: The Significance and Historical Context of Representations of Black Elite in Modern American Literature
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18K00388
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
新田 啓子 立教大学, 文学部, 教授 (40323737)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Harriet Beecher Stowe / Charles Chesnutt / Albion Tourgee / Freedmen's Bureau / Harriet Jacobs / 南北戦争 / 再建期 / アメリカ黒人 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度には、南北戦争期および再建期における黒人エリート表象と、それらを扱った文学作品についての調査と整理を開始した。具体的には、まず(1)黒人の再植民計画の推進に係わったFreedmen's Bureauのアーカイヴ調査を行うことで、Harriet Beecher Stoweの作品に描かれた同計画の政治性や作家の人種観などを検証した。この調査は、8月末から9月初旬に行ったアメリカ南部出張の折に、マイアミ大学アメリカ高等研究所、フロリダ歴史協会、ニューオーリンズ歴史協会において行ったが、アーカイヴ資料に関しては、解放黒人一般に対する施策の成果が淡々と記されている傾向が強く、あらかじめ想定していた民主党(=旧南部側)への特殊な感情のようなものは特に見出せなかった。次に(2)Charles ChesnuttとAlbion Tourgeeの作品を集中的に読み進めるとともに、奴隷ではあったものの、その特殊な境遇から一種のエリート意識をもって体験記を刊行した女性逃亡奴隷Harriet Jacobsの故事をまとめ、そこにおける黒人像を、現在手に入る黒人エリートに関する歴史的二次文献を手がかりに整理した。その他、成果公開としては、先に予備研究として着手していたJean Toomerのエリート意識の南部文学総体における位置づけを追究し、それをWilliam Faulknerの創作意識と比較した単著論文としてまとめあげた。同時に、本研究テーマに間接的に係わるサブテーマ(黒人における階層と家族の問題)をもつ現代文化に関する雑誌論文、同じく本研究の概念装置である人種とジェンダー、さらには人間の生存戦略に関する論文を日本と台湾で刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度であったため、当初は調査成果物の検証を地道に進めることを専一に考えていたが、本研究にとって肝要な概念面に関する単著論文を執筆し、文献の解釈や思索に活かすことができた。これは間接的に、当初想定していなかった方向(=思想史の確認、人種意識の研究史の確認)で役立ったと思われる。本研究の時代背景とは必ずしも合致しない作品についての論文や発表の依頼をうけ、それに取り組むこともあったが、それらについても、すべて本研究を遂行する際に得たリサーチ・クエスチョンと結びつけて進めることができたため、本研究を、将来的に単著として出版する際のヴィジョンなどを明確化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初立てていたリサーチ計画に特段の無理がなかったことが、1年間の取り組みで明らかになった。よって次年度も予定通り、第三期文献調査(ハーレムルネサンス期の文書を対象とする)を推進するとともに、可能なところからその成果公開に進んでいきたい。すでに6月には、日本英文学会関東支部会におけるシンポジウムでZora Neale Hurstonについての口頭発表を行うことが決まっている。Hurstonに関しては、2018年に_Barracoon_というこれまで91年間未刊行であった元奴隷の聞き取り調査の記録が出版された。こうした書物などに彼女の階級意識がどう表象されているかを重点的に考察したい。さらに黒人エリートというテーマと様々な局面でつながる主題を展開する同時代のモダニズム作品(FaulknerやErnest Hemingwayのものなど)も、研究の射程に含めたい。
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Causes of Carryover |
校務の都合で、当初計画したほどの海外研究調査日程が取れなかった。その結果、約9万円の余剰が生じた。これは次年度以降に繰り越して、史料調査のために使用する予定である。
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Research Products
(5 results)