2019 Fiscal Year Research-status Report
The Third Race: The Significance and Historical Context of Representations of Black Elite in Modern American Literature
Project/Area Number |
18K00388
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
新田 啓子 立教大学, 文学部, 教授 (40323737)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Zora Neale Hurston / James Weldon Johnson / Jean Toomer / ハーレム・ルネサンス / 人種解放 / 奴隷制度 / アメリカ黒人 / 再建期 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究当初より計画していた「第3期文献研究」を進めるとともに、順次成果公開を行った。文献研究はアメリカ黒人のいわゆる大移住期からハーレム・ルネサンス期におよぶものであり、James Weldon Johnson, Jean Toomer, Zora Neale Hurstonらを中心に、明示的に社会層となって定着しはじめた黒人エリートの多様な言説や足跡を調査した。この中のJohnsonとToomerは、それぞれ政治とも関係の深い人物である。Johnsonについては、黒人人権団体NAACPの事務局長としての、またTheodore Roosevelt政権期の外交官としてのキャリアにおいて蓄積された言説から、帝国主義や人種解放に関する思想を分析した。Toomerに関しては、高明な政治家である祖父P.B.S. Pinchbackへの心情を綴った未刊行の自伝から、「黒人エリート」という像に対して彼が構築しようとした、自己認識の複雑な諸相を検証した。Hurstonについては、昨年度フロリダ等で収集したアーカイヴ資料とともに、長らく未刊行であった元奴隷の聞き取り調査の記録、_Barracoon_(2018)を紐解きながら、彼女の階級意識のあらわれについて重点的に考察し、その初動の成果を日本英文学会関東支部シンポジウムで口頭発表した。 そのほか、以上の中心的主題を考究するうえで概念化することのできた多様な議論や問題を応用することで、より広範な作家や作品の理論的研究を遂行した。自由という観念に対する理論的考察、Henry Jamesにおける恥辱論、William Faulknerにおける歴史論、Ernest Hemingwayにおける法理念論、Edith Whartonにおける人種論がそれであり、それぞれについて論文や口頭発表の形で成果公開を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「黒人エリート」という存在の複雑な位相を明確に概念化することにより、黒人思想史のレヴェルで従来多角的に問題視されてきた「階級性」を、具体的に詳らかにできている。作家の自意識や国家観の現れた文献を精査する作業から、これが可能となっている。また、そうした思想内容の解釈に役立てるために行っている「情動」や「主体」等の理論的研究が、より広く派生的な研究成果に結びついていることからも、本研究は順調に進展しているということができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初立てたリサーチ計画に特段の問題性がみられないことから、次年度も予定通り第4期(第二次世界大戦期)、ならびに第5期(公民権運動初期)の文献研究を続行したい。しかし、Covid-19の世界的蔓延による渡航規制のため、当初計画していたアーカイヴ・リサーチや国際的パネルにおける成果公開の遂行可能性が不透明となっている。特にリサーチに関しては、インターネット等を利用した資料閲覧の可能性を個別に探りながら、研究に支障が出ないように取り図りたい。
|
Causes of Carryover |
年度終盤にJames Weldon Johnsonの帝国主義観を一次資料調査すべく、オーストラリア国立公文書館に出張を予定していたが、日程を最終調整しようとした矢先にCovid-19の蔓延傾向が明らかとなり、結果として渡航が不可能となった。海外資料調査の可能性は、引き続き2020年度においても不透明であるが、公刊されている文献を揃えるために研究費を有効に使用するなどし、研究に支障の出ないよう留意したい。
|
Research Products
(9 results)