2020 Fiscal Year Research-status Report
The Third Race: The Significance and Historical Context of Representations of Black Elite in Modern American Literature
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18K00388
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
新田 啓子 立教大学, 文学部, 教授 (40323737)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Black Lives Matter / 人種主義 / 公民権運動 / ジム・クロウ / 黒人文学 / アメリカ合衆国 / 警察暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
4カ年の研究後半期に入った本年度は、当初の予定通り「第5期文献研究」を進行しつつ、成果公開に専心した。ただしcovid-19の蔓延により、海外アーカイヴ調査が全面的に不可能となったため、文献研究の方法とその遂行内容には部分的な変更が生じた。 研究の計画当初では、今年度のアーカイヴ調査の主たる対象は、公民権運動の黎明期となる1940年代から60年代初頭の文献と定め、それをあくまで文献刊行時の歴史的背景のもとで精密に分析する予定であった。しかし、日本からウェブ上でアクセスできる資料には限りがあり、もはや一次資料頼みでは、現代的課題に通ずる新たな知見に到達し、それを出版物として社会還元することは難しいと考えられた。そのような中、折しも合衆国では多年のマイノリティ・移民差別問題、警察暴力、黒人をめぐる収監格差問題を一気に露呈させる事件が起き、公民権運動の現代的水準と目される社会運動、ブラック・ライヴズ・マターが世界中に拡散した。これを受け、この状況に対して学術的見解を求められる機会が増えたこともあり、本研究もリサーチの基本方針を変更した。つまり、現時点のアメリカ社会状況が示す諸問題を洗い出し、その意味を敷衍しながら、そこから遡る方向で、公民権運動期の一次資料のみならず既刊の書籍や批評的言説、文学作品などを新たに検討し直すことにしたのである。それに基づき、国際的な水準における黒人エリートの社会的スタンスの転換を、現在にいたる歴史的背景とともに考察した。 成果公開に関しては、これらの作業の成果を専門誌における論文や訳書の解説文として発表すると同時に、単著としてまとめるべく執筆を開始した。これについては22年度中の刊行を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度終盤より、研究当初に計画していた海外アーカイヴにおける一次資料調査が不可能となり、本研究もわずかながらその影響を受けることとなった。しかし、本研究の遂行に本質的に関連する様々な次元のテクストは、従来の研究においても数多く収集され、その蓄積は相当な規模になっている。したがって、新たに得た知識に基づいてそれらを丹念に再検討しつつ、別様の枠組みや方向性から当初より目指していた学問的問いを解明することが可能となった。また、そのような工夫が必要であったため、かえってより腰を落ち着けた資料分析や重層的な思索を尽くした記述が可能となったため、研究の密度はよりあがったということができる側面もある。さらにそのような方針で公開した成果についても、学術界のみならず、社会的に広く読まれ、しばしば「混迷を極める」とも形容されてきた合衆国の人種問題の理解を促したといえるため、本研究は順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、次年度が最終年度にあたっているため、以後はさらに成果公開に集中して取り組まれることとなる。本年度遂行することができなかったアーカイヴ調査に関しては、パンデミックの推移次第で可能性が開かれれば、これを次年度に実現させたいと考えている。成果公開に関しては、これまでのところ、論文や講演、学会報告のかたちで順調に進んでいるが、今年度後半期には単著執筆の計画を固め、すでに作業を始めているので、できるだけ早い時期に出版にこぎつけたい。
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Causes of Carryover |
covid-19の蔓延により海外出張が不可能であったため、84万円もの次年度使用額が生じた。海外資料調査の遂行可能性は2021年度においても引き続き不透明であるが、出張が不可能な場合にも、公刊されている文献を揃えるためなどに研究費を有効に活用し、意義ある成果を出したいと思う。
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Research Products
(3 results)