2020 Fiscal Year Research-status Report
The House that Tom Built: Murphy's Theatre and Irish History of Mentalities
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18K00389
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三神 弘子 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20181860)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アイルランド移民 / 帰還 / ケルティック・タイガー / 家(ホーム) |
Outline of Annual Research Achievements |
本来2020年度に予定していた、マーフィー作品に見られる「暴力性」については、2019年度に取り上げ、検討済みである[現在、学術誌に投稿中]ため、2020年度は、マーフィー作品における「移民のテーマ」について、主に、A Whistle in the Dark (執筆年1961、作品の時代は1950年代), Conversations on a Homecoming (1983、時代は1970年代), The House (2000、時代は1950年代)の3作品を取り上げ、検討を加えた。最初の2作品における移民(出稼ぎ者)たちは、経済的な意味で「失敗者」と見なされている。一方、The Houseにおけるクリスティは、ロンドンで富を手にし、帰還した「成功者」である。興味深いことに、経済面で成功しようと、失敗しようと、マーフィーの登場人物たちが閉塞感を抱えて生きている点は共通しており、その閉塞感は、作品の執筆年と、作品が設定された時代とその社会を如実に反映させている。
成功者であれ、失敗者であれ、祖国アイルランド(home/house)を希求する登場人物に注目しつつ、アイルランド現代史における意識の変化の中で、移民の概念、「home/house」の概念が1950年代から2000年にかけてどのように変化したのか、執筆年代と作品が設定された時代との関係性に注目しつつ、出版されたテキストの分析を行った。(海外出張が可能になった時点で、アーカイブ所蔵の手書き原稿、タイプ原稿の比較検討を行う。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、オンライン授業の準備に時間をとられ、結果的に研究に割く時間は少なくなった。また、Trinity College Library所蔵のMurphy文書、Abbey Theatre Archive所蔵の上演データの調査を予定していたが、COVID-19の影響で、海外出張をすることができず、マーフィーの手書き原稿、タイプ原稿などの調査を進めることができなかった。 また、研究発表を行う予定だった、海外の学会も中止となったが、2021年7月にオンラインで実施されることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も海外出張の実施が難しいようであれば、「移民のテーマ」について、現在終了している、出版されたテキストの分析をまとめたものを、論文としてまとめ、学術誌に投稿する。 歴史・物語・記憶という視点から、既に検討、分析を行った諸テーマについて、総合的に研究をまとめていく。
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Causes of Carryover |
2020年度に本来予定していた海外研究出張、学会参加ができなかったため。今後、海外出張が可能となった場合は、研究出張、学会参加のための経費とし、引き続き困難な場合は、代替として、既に手元にある資料をデジタル化を進めるためのシステムを構築する。
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