2022 Fiscal Year Research-status Report
The House that Tom Built: Murphy's Theatre and Irish History of Mentalities
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18K00389
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三神 弘子 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20181860)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トム・マーフィー / アイルランド演劇 / アイルランド史 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで検討してきたマーフィーの劇作品で扱われている諸テーマ(音楽性、移民/帰還の問題、暴力性など)が、アイルランド史という大きな枠組みの中でどのように位置づけられるか、総合的に考察する試みの第一歩として、1968年のFamineを取り上げた。この作品は、一義的には19世紀半ばに起こったジャガイモ飢饉を扱った歴史劇とみなすことができるが、単に飢饉の時代を扱っているだけでなく、劇中の様々な仕掛けにより、1798年に起こったユナイテッド・アイリッシュメンの蜂起の時代から、劇が執筆された1968年までの170年という年月をカバーしていることを読み解くことができる。この劇は、20世紀半ばのアイルランド社会の「飢餓」を描いた「現代劇」でもあるのである。また、Famineには、イェイツ、グレゴリー、シング、オケイシー、ベケットといった、アイルランド演劇史における「カノン」とも言える作家たちの作品群が、人々の記憶、集合的無意識として巧妙に隠されている点についても考察した。('Famine (1968) by Tom Murphy'として、Shaun Richards (ed) Fifty Key Irish Plays, Routledge, 2022)に所収)
また、Trinity College Dublin Library所蔵のTom Murphy PapersとBritish LibraryのSound Archive所蔵のマーフィー関連の音源の調査を実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で阻まれていた、現地のアーカイブ調査も2022年度には可能となり、調査の成果をふまえて、総合的に研究をまとめる目処がたった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は最終年度にあたるので、『飢饉』の例に倣って、これまでの研究を総括する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、2年間、予定していた海外への研究出張ができなかったため。
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Research Products
(1 results)