2023 Fiscal Year Annual Research Report
The House that Tom Built: Murphy's Theatre and Irish History of Mentalities
Project/Area Number |
18K00389
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
三神 弘子 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20181860)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トム・マーフィー / アイルランド演劇 / 心性史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、アイルランドの劇作家トム・マーフィーのThe House(2000)を軸に、「家」=国(アイルランド)という枠組みの中に見られる、彼の過去の作品群、テーマを概観することによって、マーフィーの全体像をアイルランドの近現代史という文脈の中でとらえ、アナール学派の言う心性史として読み解くことをその目的としている。その結果、マーフィーが一貫して描き続けたアイルランド人の精神史を、集合的かつ歴史的連続性の中でとらえ、今日的意味を探ることが可能となった。2023年度は、コロナ禍の影響もあって通算6年間に及んだ研究を包括的にまとめる作業を行った。具体的には、移民/帰還のテーマ、宗教性、音楽性、暴力性、20世紀後半に国が経験した未曾有の好景気(ケルティック・タイガー)と人々の意識の問題、国民の記憶、トラウマ、集合的無意識、またアイルランド文学におけるCanonの問題、という切り口で、マーフィーの全体像を捉える試みを行った。また、研究計画には含まれていなかったものの、研究を進めるにあたって、マーフィー作品の日本における需要、パフォーマンスの問題などについても研究を進めた。 2019年と2021年に国際学会で行った口頭発表'Tom Murphy's The Wake: Performance vs Texts'と'Tom Murphy in Japan'を論文にまとめ、2021年度の日本語論文「ドルイド・シアター・カンパニーにおけるサイクル上演:「ドルイドマーフィー」の場合」を英語論文('DruidMurphy in 2012: in the context of post-Celtic Tiger'に書き直した。それらは、英文による単行本の2章として位置づけられ、現在最終的な出版準備を進めている。
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