2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on the representation of visual images in Shakespeare's plays
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18K00390
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
冬木 ひろみ 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10229106)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シェイクスピア / 視覚表象 / エクフラシス / エンブレム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は3年間でシェイクスピアの言葉のレトリックが描き出す視覚的な表象の手法を明らかにすることを第一の目的とし、さらにシェイクスピア自身の劇作における時間的推移の中で、絵画的な手法が変容してゆく状況をテクストの言語を分析することにより示してゆく。 初年度は、1600年頃(『ハムレット』が執筆される頃)までの主にイングランドで出版、及び流入したと考えられる視覚表象に関する文献を大英図書館で検索し収集した。収集した資料の多くは、当時の絵画("L’Art de Devises", Vasariの"Lives of the Most Excellent Painters", Arbertiの"On Painting"など)やエンブレム(Whitney, Wither, Peachamなどによるエンブレムブックetc.)、さらには宗教的な絵画の与える影響などについて(Bibleの挿絵、George L'Oyseletによる"Godly contemplation for the unlearned"など)の当時出版された一次資料であるが、それらは単独での資料の価値があるのみならず、調べてゆくと、より広範な波及効果を持って詩や演劇文化にも関わり得た可能性があることがわかってきた。こうした資料とそれに対する分析・検討により、シェイクスピアは初期から中期の劇に至るまでは、主にエクフラシスという言語により絵画的な場面を描こうとする手法により観客の想像力を喚起していることが明らかになってきた。 本年度、研究代表者は学会発表と著書(共著)の出版を行った。また著名なシェイクスピア学者である東京工業大学名誉教授・玉泉八州男氏を招聘し『十二夜』を中心とする講演会を開催したことにより、時代と文化の中でのシェイクスピア独自の劇表象の特異性が明らかになり、大きな収穫を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、当初の計画通り、当時のマニュスクリプトの数点を確認し、また現代の批評書としても、視覚表象と宗教の関係についてはMarcus Nordlundの"The Dark Lantern", Ernest Gilmanの"Iconoclasm and Poetry in the English Reformation"などの比較的入手が困難な書籍を検討することができた。また他にも、視覚的な表象が当時の社会的習慣や特に宗教的な信念(偶像破壊による宗教画の破壊)によりいかに影響を受けたかを文献から分析・検討をかなり進めることができた。 さらに、視覚芸術である絵画やエンブレムがどの程度当時のイギリスの詩や特にシェイクスピアの劇と密接な関係性があったかについては、テクストとの詳細な照応をすることで確認できるものもあった。 また、当時の劇場の構造からどのような視覚表象があり得たかなどについて、バーミンガム大学・シェイクスピア・インスティチュート教授のTiffany Stern氏が早稲田大学の招聘により来日し講演を行なった際に交流し、知見を得られたことも有益であった。 なお、本年度得られた知識・論考を今後論文にするつもりだが、今期は半年という時間的な制約もあったため、次年度に活字化する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き視覚表象に関する資料を大英図書館などで収集し、分析・検討を進める。また、こうした第一次資料の詳細な検証をもとに、視覚文化・表象に関する現代批評の理論を再検証することで、これまで盲点となっていた新たな論、即ち、シェイクスピアの1600年以降の劇におけるマニエリスム的な要素を検討する。さらに宗教との関係性についてもより深く分析・検討を進める。 また、シェイクスピア時代のエンブレム研究を専門とする研究者とシェイクスピア時代の表象文化に詳しい研究者を招聘し、講演会を開催する予定である。 さらに、これまでに得られた成果は、発表及び論文として出版する予定である。
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Causes of Carryover |
若干の未使用金額が出たが、次年度に図書費の一部として使用する予定。
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Remarks |
バーミンガム大学とその大学院であるシェイクスピア・インスティチュートと早稲田大学文学学術院は2017年よりシェイクスピアの分野で研究連携しているが、平成30年11月にシェイクスピアの主に舞台に関するシンポジウムを早稲田大学にて開催した。学内外に告知し大規模に行ったが、本研究代表者は、このシンポジウムの企画・司会進行・閉会挨拶などを行った。
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Research Products
(5 results)