2019 Fiscal Year Research-status Report
Early-modernity of the Stock Type of Villain in English Revenge Tragedy
Project/Area Number |
18K00392
|
Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
中村 友紀 関東学院大学, 経営学部, 教授 (80529701)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 復讐劇 / 近代初期 / ルネサンス / イギリス演劇 / セネカ悲劇 / モンスター / 人間性 / 翻案 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究成果は以下(1)-(5)である。 (1)復讐者の死という典型的結末の因果応報の質の1600年以降の変遷を文化史的に分析した。論文“A Revenger Must Die: the Scapegoat for the Community in Revenge Tragedies”として2019年度Shakespeare Theatre Conference(於:カナダ、ウォータールー大学)で口頭発表した。(2)ユートピア文学の新世界の設定もモンスターも、人間性の定義を解体する枠組みとしてシェイクスピアの『テンペスト』で表現され、その翻案であるリドリー・スコットの2017年の映画『エイリアン:コヴェナント』において先鋭化されている。本論文は“Utopia and the Monster: Ridley Scott’s Alien: Covenant as an Adaptation of The Tempest.”と題して、European Shakespeare Research Association 2019年大会(於:ローマ第3大学)で口頭発表を行った。(3)近代初期復讐劇の正義の概念への人文主義的な反権力の思考の影響を検証し、論文“The Modern Image of Justice: Senecan Tragedies as a Medium of Renaissance Humanism”(『自然・人間・社会』67号(2019年7月))として成果公開を行った。(4)上記(2)の論文を『自然・人間・社会』68号(2020年1月)において成果公開した。(5)研究協力者と研究代表者との3名で、シンポジウム「反価値の人物造形:西洋古典及び近現代ドラマの悪役の比較研究」を、日本比較文化学会が主催する関西支部例会(2019年10月、於同志社大学)にて行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当課題の申請時に掲げた3つの問題について、2019年度に発表した3つの論文で検証を行い、結論を導き出すことができた。3つの問題とは、[1] 近代初期復讐劇の倫理的・美学的特徴を生み出したルネサンス的・近代初期的要因、[2] 近代初期復讐劇への古典からの影響、[3]現代の娯楽映画への近代初期復讐劇の影響である。研究実績概要報告で挙げた(1)の論文では、上記[1]については、法学院についての社会史研究という隣接領域の研究から、新たな検証すべき論点を見出し、復讐劇受容の倫理的・美学的価値基準が、ルネサンス的な尺度での人間性/非人間性の境界線を強化するものでも、揺るがせるものでもある点に着目することができた。(2)の論文では、ルネサンス的な人間/非人間のパラダイムが、今なお現代の表象においてもテーマを生成するパラダイムとして有効であり、イメージを生み出す源泉となっている点を検証した。(3)の論文では、反権力という意味合いを帯びた正義の概念が、復讐劇の様式の古代から近代初期への継承において引き継がれたことを検証した。(4)のシンポジウムでは、古代ローマ、近代初期イングランド、現代のアメリカそれぞれの文化固有の倫理的あるいは美学的価値が表象を形成するメカニズムについて、比較文学的な検証を行うことができた。明らかにすべき問題として設定した3つのテーマについて、一定の究明は2019年度中に行い、また、発表の機会を得て公表も終えたため、当初の計画以上に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、申請当初に設定した3つの問題点の究明に努める。2020年度は以下の3つの活動を予定している。 (1)人間の条件ともいうべき、人文主義的な人間の観念へのアンチテーゼの表現が復讐劇の表象の多くを占めている点の検証のために、反人間性の表象にかかわる、暴力の表象を検証する。近代初期の表象文化においては、復讐はおおむね暴力として認識・表現され、それゆえの倫理的価値判断と、およびそれに矛盾するかのような美的価値判断とが表象を形成している点に注目する。その議論を論文の形で、国際学会で発表する予定である。現地での直接参加が不可能な場合、リモート参加を行うことになっている。 (2)2019年度の実績の(2)および(4)で挙げた研究をさらに推し進め、現代のSF映画と近代初期演劇の比較において、近代初期から現代まで維持されてきた人間性の概念が、ルネサンスの表象において明確なイメージを形成し、それがコンヴェンション化した要因を、人文主義に見出す研究を行う。国際学会で発表することになっていたが、大会の延期が予定されている。他にも開催自体が中止になった国際学会があり、そこで発表する予定だった、上記2本の論文とは別の論文の発表先を改めて探す予定である。
|
Causes of Carryover |
研究協力者の支出が、シンポジウムを在住地近くで開催したこと、また海外出張費に使用しなかったことから、発生しなかったため。次年度使用額は、2020年度の研究協力者および研究代表者の、旅費、学会誌掲載費、論文校正費といった支出に使用する可能性がある。
|
Research Products
(4 results)