2021 Fiscal Year Research-status Report
Early-modernity of the Stock Type of Villain in English Revenge Tragedy
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18K00392
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
中村 友紀 関東学院大学, 経営学部, 教授 (80529701)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人間性 / 人文主義 / ルネサンス / エイリアン / エリニュエス / 復讐劇 / 懲罰 / 反価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は以下の論文(1)(2)において、当課題において中心的問題であるルネサンスの諸価値にかかわる近代初期的な人間性の観念の表象を論じた。(1)"The Renaissance Paradigm of Humanity in The Tempest and its Modern Interpretation by Alien: Covenant"は、2021年に順延されたThe European Society for the Study of Englishの国際学会(オンライン開催)にて2021年9月3日に口頭発表したのち、『自然・人間・社会』72号(2022年1月発行、pp.1-12)にて論文として公開した。ウィリアム・シェイクスピアのThe Tempestの翻案である2017年の映画Alien: Covenant(監督リドリー・スコット)における現代の人間性の表象のルネサンス的性質を分析した。AIや生物兵器に人間性の負の側面を見出すことは一見現代的に思われるが、ルネサンス的な人間性の理想および人間性への懐疑と共通するという結論に達した。(2) “The Furies and Justice in Ancient, Early Modern, and Modern Revenge Drama”は、London Centre for Interdisciplinary Researchが2021年9月に開催したInternational Conference on Myths, Archetypes and Symbols: “Models and Alternatives”(オンライン開催)にて口頭発表した。ギリシャ悲劇の復讐劇、近代初期復讐劇、復讐を主題とした現代の映画、これらいずれにおいても復讐の概念が擬人化され、社会から排除すべき負の要素として認識されつつも、それぞれの社会の人々の暴力や復讐への強い関心の痕跡が認められる点に注目した。忌避や関心の結実としての擬人化表象において、連続性と同時に各社会の特徴も潜在する点を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当課題の中心的問題点である「反価値」、つまりそれぞれの社会の倫理的、美学的な価値基準に照らして好ましくないとされる諸属性に関して、ルネサンス人文主義的な特徴を、近代初期復讐劇、および近代初期演劇に顕著な影響を与えた古代演劇、また近代初期からの連続性を示す現代のドラマにおいて解明することができた。特に、演劇あるいはドラマが、それぞれの社会の諸価値を表象する芸術である点、また、近代初期イングランド演劇の古典との関係、および現代のドラマ的形式の表象への直接的連続性の点の解明が当研究課題の主要な目的であるため、これらの問題点への一定の結論を明示できたことから、進捗状況としては良好であると判断している。しかし、2021年度に取り組んだ2本の論文のうち1本は、まだ確認できていない史料があるため、概ね完成しているものの情報が一部欠けており、今後資料調査を経て完成させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
古代ギリシャ悲劇の近代初期の受容についての史料の、異なる複数の版を照合して確認するというプロセスを経る必要がある。この確認ののちに、2021年度に取り組んだ論文を完成させる。また、当課題の争点となる「反価値」に関連する問題を含む、演劇テクストの異文化間受容の好例となる映画作品を分析し、論文として今年度中にまとめる計画がある。
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Causes of Carryover |
2021年度は、当初予定していた資料調査に赴くことができず、また、当初現地で参加予定だった学会がオンライン開催となったため、これらの旅費の支出がなかった。資料調査は2022年度に繰り延べとなり、また当課題のテーマに関連した論文を2022年度に発表する計画が2021年度中に新たに生じたため、2022年度使用額が生じた。
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Research Products
(3 results)