2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on Cold-War Creative Writing Pedagogy and 20th Century American Literature
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18K00396
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 恭子 立命館大学, 文学部, 教授 (90338244)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / クリエイティヴ・ライティング / 冷戦 / モダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はアメリカ冷戦期におけるディストピア小説、およびアメリカ以外の国で執筆されたディストピア小説のアメリカにおける評価傾向について考察を行った。自国の政治批判の側面がある作品でさえも、社会主義・共産主義・全体主義の批判と読みかえる傾向があったことが明らかになった。これは、テクストの読み方にあり得べき国家の自画像が投影される点において、「アメリカ文学らしさとは何か」という本研究の主要な問いに大きく関わる。アメリカのディストピア小説の受容と創作の伝統については、「現代アメリカの風刺ディストピア小説」として端的にまとめた考察を、秦邦生編著『ジョージ・オーウェル『一九八四年』を読むーーディストピアからポスト・トゥルースまで』に発表した。 また、レベッカ・L・ウォルコウィッツ著『生まれつき翻訳――世界文学時代の現代小説』の監訳を進める過程において、「国民文学」的文学空間と「ポスト国民文学」的文学空間とでは、翻訳とオリジナルテクストとが取り結ぶ関係に違いがあるという洞察が得られた。前者においては、作者の国籍・言語・テクスト生産地などに応じて、オリジナルテクストは排他的に何らかの「国民文学」に分類され、その種々の翻訳もその「国民文学」に属するものと見なされた。しかし「国民文学」という枠組みがもはや大きな意義をもたない「ポスト国民文学」的文学生産空間においては、作品の翻訳の帰属もまた割り切れないものとなる。対象言語の文学が翻訳によって豊かになる可能性について、シンポジウム「国民文学の終焉――アメリカ文学の(再)世界化、世界の脱アメリカ化から考える」にて「翻訳するアメリカ文学」と題して発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では当初、アイオワ大学、テキサス大学ハリー・ランサムセンター、スタンフォード大学、アメリカ国立図書館での資料収集調査を予定していたが、新型コロナウィルス流行に伴う海外出張の制限により、現時点では実現していない情況である。
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Strategy for Future Research Activity |
海外でのアーカイヴ調査が可能な場合、不可能な場合とでそれぞれ計画を立てて研究をすすめる。いずれの場合も、国内で研究会・読書会を開催することによって、連携研究者からのフィードバックができるような環境づくりを心がける。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス流行に伴う海外での研究活動の制限でアーカイブ調査等が実行でなかったために、次年度使用額が生じた。来年度は、海外での資料収集調査と国内での研究会・講演会の謝金に使用する計画である。
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