2021 Fiscal Year Annual Research Report
Coleridge's Professionalism--Literary and Philosophical Lectures and his Later Works
Project/Area Number |
18K00402
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
園田 暁子 福岡大学, 人文学部, 教授 (00434564)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | コールリッジ / 講演 |
Outline of Annual Research Achievements |
コールリッジの文筆家としての人生は、文筆により経済的に自立する必要性と、何ものにも邪魔されずに文学者、知識人としてなすべきだと彼が考える仕事との間での葛藤に満ちていた。彼自身はそれらを本質的に両立しないものであると考えていたが、むしろ両者をすりあわせながら文筆に専念し、自らに課した基準を満たす作品を残したところにコールリッジの文学者としてのプロフェッショナリズムがあることを示すことが本研究の目的である。 最終年度の本年度は、コールリッジが一貫して持ち続けた神の声を伝え、文学、科学、哲学という諸科学を統括する存在としての天職意識と、商業活動としての文筆業や講演活動との間で感じた葛藤が、実は執筆への原動力となり、文学者としての存在意義や同時代と未来の読者に向けてなすべき仕事についての本質的な問いの深化に寄与したのではという本研究の仮説を検証すべく研究を行った。特に、後期の重要な著作の一つ、『教会と国家について』を中心にすえ、講演の内容がどのように発展し、この著作に示された思想が形成されていったのかを、彼が講演の準備のために残した備忘録などをもとに確認した。その結果、1808年以降の文学・哲学・教育・宗教の問題を扱った講演活動が、1810年代半ば以降に出版された作品の創作過程において重要な役割を果たしていること、そして、それらの講演が彼のキリスト教哲学に裏打ちされ、後世にも広範な影響を持った後期の社会批評に結びついていることが確認できた。当初は、コールリッジの講演が行われた場所や会場のサイズなどについても念頭において研究を行いたいと考えていたが、イギリスでの現地調査と文献調査はコロナ禍のために叶わなかったので、その分の研究費で、コールリッジ関連の研究書、宗教、政治、哲学関係の書籍等のを購入して研究を行った。
|