2018 Fiscal Year Research-status Report
ユダヤ系アメリカ詩の伝統なユダヤ的素材の援用と逸脱の系譜
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18K00408
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
宮本 文 群馬大学, 教育学部, 准教授 (90507930)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アレン・ギンズバーグ / ユダヤ系アメリカ文学 / カディッシュ / アメリカ文学 / ユダヤ系アメリカ文化 / アメリカ文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユダヤ系アメリカ文学において詩の系譜が不在であることに着目し、ユダヤ系アメリカ文学における詩の意義と独自性および系譜を明らかにすることが目的である。そのために、ユダヤ文学における詩の位置づけの確認を踏まえ、ユダヤの儀礼的な詩形、とくにKaddishに注目し、ユダヤ系アメリカ詩人がユダヤ詩の伝統をどのように援用・反復・逸脱しているのかを辿り、ユダヤ系アメリカ詩のパターンを探ることによりユダヤ系アメリカ詩の系譜を明らかにする。 その検証の手始めとして、アレン・ギンズバーグがどのようにKaddishを援用・反復・逸脱しているのかを探った。その一つの成果として、平成30年6月に出版された論文「“You Still Haven’t Finished with Your Mother”―Allen Ginsbergの“Kaddish”における離散・忘却・邂逅」(日本アメリカ文学会東京支部『東京支部会報 アメリカ文学』79号)が挙げられる。本稿では「部屋の夢」というモチーフを媒介に、「離散」を前提条件としたユダヤ詩の基本形を確認し、統合失調症を患っていた母親ネオミ追悼の長篇詩 “Kaddish”において、母の個別の姿を回復する試みがどのようにユダヤ詩の基本形を援用し展開されるのか検討した。 具体的には、ギンズバーグは家へ辿り着かない夢をよく見、「部屋の夢」と名付けてしばしば詩に援用した。本稿では、家への志向と忌避という相反する行為で構成される「部屋の夢」というモチーフを媒介に、「離散」を前提条件としたユダヤ詩の基本形を確認し、統合失調症を患っていた母親ネオミ追悼の長篇詩 “Kaddish”において、母の個別の姿を回復する試みがユダヤ詩の基本形を援用し展開されるのか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年に予定していたアメリカへのリサーチ旅行を諸事情によって見合わせたので、その点で従来の計画よりも遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
チャールズ・レズニコフの"Kaddish"とアドリエンヌ・リッチの"Tattered Kaddish"を中心に、両者がユダヤの伝統的詩形のカディッシュをどのように援用しているか検証することにより、ユダヤ系アメリカ詩人がユダヤ詩の伝統をどのように援用・反復・逸脱しているのかを辿る。ギンズバーグと同様に、両者は伝統的なカディッシュから逸脱したアンチ・カディッシュの立場からカディッシュを援用しており、これらの詩人たちの共通点を見出し、ユダヤ系アメリカ詩のパターンを探ることによりユダヤ系アメリカ詩の系譜を明らかにする。 またレズニコフとリッチの研究をある程度進めたのちに、とりわけユダヤ系女性詩人たちに注目し、それまで伝統的なユダヤ文化に置いて周辺的な声に置かれていた彼女たちがどのようにカディッシュを援用しているのか探るつもりである。 そのために2019年度および2020年度でアメリカへのリサーチ旅行を行い、資料を収集し、課題遂行に努める。
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Causes of Carryover |
平成30年度に予定していたアメリカへのリサーチ旅行を諸事情により令和元年度に行うことにしたので、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(1 results)