2020 Fiscal Year Research-status Report
ユダヤ系アメリカ詩の伝統なユダヤ的素材の援用と逸脱の系譜
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18K00408
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
宮本 文 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (90507930)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アレン・ギンズバーグ / ユダヤ系アメリカ文学 / カディッシュ / アメリカ文学 / エレジー / ネイサン・イングランダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユダヤの祈祷詩カディッシュに注目し、ユダヤ系アメリカ詩人がユダヤ詩の伝統をどのように援用・反復・逸脱しているのかを辿り、ユダヤ系アメリカ詩のパターンを探ることによりユダヤ系アメリカ詩の系譜を明らかにすることが目的である。したがって,ジャンルとして詩をメインに扱うものであるが,今年度はユダヤ系アメリカ人の小説家ネイサン・イングランダーの執筆した小説をにおいてカディッシュがどのように援用され,逸脱されているのかということを研究のメインにおいた。 イングランダーは本科研のプロジェクトが始まった後の2019年にKaddish.comというタイトルの長編小説を出版し,また遡って2012年に出版した短編集所収の"Sister Hills"でカディッシュを非常に重要な小道具として利用している。ユダヤ系アメリカ小説は,かつては出版市場のジャンルとしても研究対象としても確立されたものだったが,時代を経てユダヤ系アメリカ人がメインストリームに確固たる位置を獲得するに従って「ユダヤ系」という冠を外して論じられることが多くなった。この点がユダヤ系アメリカ詩とは事情を異にすると思われていた。しかしながら,ネイサン・イングランダーをはじめ,イスラエルのようにアメリカ以外にその地理的想像力を広げることによって「ユダヤ系」アメリカ小説を意識的に執筆する小説家たちが現れた。 そこで,今年度はネイサン・イングランダーの短編 "Sister Hills"を中心に,そのなかでカディッシュがどのように援用・反復・逸脱しているのかを検討し,論文「ネイサン・イングランダーの"Sister Hills"におけるカディッシュの正統的継承と逸脱」を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度は新型コロナの流行によりアメリカへの調査旅行ができなかった。また,年度の後半に入院・手術をした。そのような理由から研究課題の遂行が予定通りに進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
チャールズ・レズニコフの"Kaddish"とアドリエンヌ・リッチの"Tattered Kaddish"を中心に、両者がユダヤの伝統的詩形のカディッシュをどのように援用しているか検証することにより、ユダヤ系アメリカ詩人がユダヤ詩の伝統をどのように援用・反復・逸脱しているのかを辿る。ギンズバーグと同様に、両者は伝統的なカディッシュから逸脱したアンチ・カディッシュの立場からカディッシュを援用しており、これらの詩人たちの共通点を見出し、ユダヤ系アメリカ詩のパターンを探ることによりユダヤ系アメリカ詩の系譜を明らかにする。 また,"Kaddish"のヴァリエーションとして同じユダヤの悼む行為Shivah(近親者の死後7日間の喪)を中心テーマに据えたマーティン・シャーマンによる戯曲"Rose"を扱い,第二次世界大戦から20世紀終わりまでの間に,悼む行為にどのような意味が付与され,どのようにその意味の変遷が表象されていったのか分析する。 新型コロナの状況が許せば,アメリカに課題研究遂行のための資料収集に行く予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナの流行によりアメリカへの資料収集旅行が行えず,また年度の後半に入院・手術をしたために課題研究の遂行・科研費の執行が予定通り行えなかった。
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Research Products
(1 results)