2021 Fiscal Year Annual Research Report
The Tradition of the Unconventional Usage of Jewish Conventions in Jewish American Poetry
Project/Area Number |
18K00408
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
宮本 文 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (90507930)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ユダヤ系アメリカ文学 / ユダヤ系アメリカ詩 / カディッシュ / エレジー / アメリカ文学 / アレン・ギンズバーグ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユダヤの祈祷詩カディッシュに注目し、ユダヤ系アメリカ詩人がユダヤ詩の伝統をどのように援用・反復・逸脱しているのかを辿り、ユダヤ系アメリカ詩のパターンを探ることによりユダヤ系アメリカ詩の系譜を明らかにすることが目的である。詩をメインに扱うものであるが、昨年度にカディッシュの援用・反復・逸脱を通してまさに現在進行形でユダヤ系アメリカ人作家であることのアクチュアリティを追求しているネイサン・イングランダーの小説に射程を広げて論文を執筆した。 イングランダーの研究を通して、アメリカ以外にその地理的想像力を広げることによってユダヤ系アメリカ文学を現在形で問い直す作家たちの視線を研究に取り込むことができた。とりわけ、イスラエル(パレスチナ)を含めることは「悼む」ことへの葛藤を生む。ユダヤ人に対する迫害の歴史やホロコーストは否定されるものではないが、一方でそれらを考えるときにすます苛烈になるイスラエルとパレスチナの問題をどのよう捉えればいいのか、葛藤を抱える発話や表象が近年ますます増えてきた。 最終年度では、カディッシュの援用・反復・逸脱を考える際に上記の視点を得て、ユダヤ系アメリカ人作家マーティン・シャーマンの戯曲『ローズ』を研究対象に加えた。『ローズ』は、かつてナチスの収容所から生き延びエクソダス号に乗ってパレスチナを目指しながらも、アメリカにたどり着いた80歳のユダヤ系女性ローズが主人公である。彼女は、イスラエル人によって殺されたパレスチナの少女のために、「シヴァ」というユダヤの弔いの儀礼を行っている。『ローズ』については本務校のリレー講義の一環ではあるが、迫害やホロコーストを経験してきたユダヤの「弔い」や「悼み」が、葛藤をとしてより開かれ普遍的なものにつながる可能性を論にして講義した。カディッシュに接合しながらこれから論文にするつもりである。
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