2019 Fiscal Year Research-status Report
The Field of Poetics and Science:Boundaries, Translations and Re-creations of Natures from the Age of Romanticism to the 21st Century
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18K00409
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
アルヴィ なほ子 (宮本なほ子) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20313174)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イギリス・ロマン主義 / シェリー / 科学 / プロメテウス |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、2つの方向で研究を進めた。1つは、『フランケンシュタイン』 と21世紀の科学との関係である。この方向の研究において、まず、前年度口頭発表を行ったものについて、日本シェリー研究センター(編)『フランケンシュタインの世紀』所収の「7つ目のC――「モダン・プロメテウス」への批判的応答」という論文に纏めて発表した。「7つ目のC――「モダン・プロメテウス」への批判的応答」は、怪物を創造し遺棄し主人公ヴィクター/フランケンシュタインが本庶佑が科学者に必要不可欠な6つのCを持っていたことに言及し、人文知、文学的な「人間」の定義を導入して、科学者を含む「人間」には7つめのC(compassion)が必要であると論じたものである。イギリス・ロマン派の文学が現代の生命科学にとっても有効な補助線となることを提示している。 2つ目の方向性は、『フランケンシュタイン』の重要な登場人物であるウォルトンに、20世紀後半から重要性を増した「ナラティヴ・メディスン」の萌芽を見ることの可能性の追求である。このことを東京大学と南京大学との合同学会の"Emerging Medical Narratives"分科会を科研費で行い、司会を務めるとともに、"Frankenstein and Narrative Humility"として発表した。また、2つめの方向性として、『フランケンシュタイン』を同時代のイギリスの科学的な北極探検のコンテクストに入れ、当時の科学、大学での科学教育、文学の関係を、現代の科学者教育との関係で考察した。その成果として、イギリス・ロマン派学会で、「21世紀の「現代のプロメテウス」:ウォルトン、クローン、感覚教育」を口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の成果を出版することができ、また国際学会での英語での口頭発表とイギリス・ロマン派学会の全国大会での口頭発表で、他の研究者たちとも有意義な議論ができ、研究の方向がより先鋭化したため。
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Strategy for Future Research Activity |
メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』、『最後の人間』、パーシィ・ビッシュ・シェリーの詩のテクスト、バイロンや同時代のイギリス・ロマン主義の著作者たちの文学と科学を交錯させるテクストと、21世紀の現代科学と人文知の関係を比較しながら、「病気」に覆われた世界から「健康」へと向かうプロメテウス的なパーシィ・ビッシュ・シェリーの展望と人類が絶滅の淵に立つメアリ/シェリーの『最後の人間』の21世紀観を検討する。
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Causes of Carryover |
海外での学会発表、調査を計画していたが、国内での国際学会の分科会を準備することになり、国内で開かれた国際学会で研究交流と発表を行ったため。
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