2018 Fiscal Year Research-status Report
成長のアンチノミーとポスト帝国のイングリッシュ・スタディーズ
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18K00410
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
大田 信良 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (90233139)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポスト帝国 / イングリッシュ・スタディーズ / グローバル冷戦 / モダニティ / オクスフォード英文学 / 福原麟太郎 / モダニズム / 読むこと/書くこと |
Outline of Annual Research Achievements |
①冷戦期の米国文学・文化をグローバルに再解釈するための媒介・翻訳空間としてのポスト帝国日本における英国文学・文化については、福原麟太郎の英文学・モダニズム受容を含めて、日本ロレンス協会第49回大会で企画・司会したワークショップで発表し、「オクスフォード英文学とF・R・リーヴィスの退場――『グローバル冷戦』におけるポスト帝国日本の『英文学』とロレンス研究」『D.H.ロレンス研究』として出版した。また、グローバル冷戦とモダニティの進展について日本英文学会東北支部においてシンポジュウムを企画し、「“After New Criticism”の、あるいは、(再)制度化されたモダニズムの、『英文学』・批評理論―― 転換期・移行期としての『グローバル冷戦』」として口頭発表した。
②ポスト冷戦期の覇権あるいはマネーとパワーの移動に端を発する歴史的変動・再編のマッピングと歴史化については、世界文学会第2回連続研究会において、「ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』と記憶/トラウマ論再考の可能性」として、口頭発表し、『世界文学』に論文として出版した。
③新たなイングリッシュ・スタディーズあるいは現在の英語教育から見直す「英文学」と20世紀の英語教育については、読むことと書くこととの不可分性の重要性をあらためて、文学・文化の「理論」の観点から再考し、「『読むことのアレゴリー』と倫理の問題/「エコノミーにおける転換」という論考を、ポール・ド・マン特集のほかの諸論文を含む特集の序文「ポール・ド・マンを読むこと/書くこと」とともに、出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①冷戦期の米国文学・文化をグローバルに再解釈するための媒介・翻訳空間としてのポスト帝国日本における英国文学・文化については、福原麟太郎の英文学・モダニズム受容をターゲットとして取り上げ、英国ならびに米国における研究・教育のコンテクストに位置づける仕事を2つ発表し、さらにこうした研究・調査を続けている。
②ポスト冷戦期の覇権あるいはマネーとパワーの移動に端を発する歴史的変動・再編のマッピングと歴史化については、ヴァージニア・ウルフとトルコによるアルメニア人大量虐殺・トラウマの問題を地政学のコンテクストに置き直すことにより、中国・インドを含むユーラシアへの歴史的変動をとらえる端緒とすることができた。
③新たなイングリッシュ・スタディーズあるいは現在の英語教育から見直す「英文学」と20世紀の英語教育については、4技能あるいは5領域のなかで話すことやコミュニケーションのスキルへの注目や言説が支配的な状況をふまえつつも、あらためて、読むことと書くことの意味や価値を考えることにより、英語教育と英語文学・文化研究との関係性をとらえ直す新たなイングリッシュ・スタディーズの理論的な足場を築くことが可能になった、と同時に、これをさらに理論的・実践的に深化・拡大するための異文化理解の問題についてアクティヴな研究ならびに教育を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、福原の主要な仕事あるいはテクストのみならず、収集中の『あるびよん―英文化綜合誌』(1949-60、全48号)についての研究会を本格的に始動することにより、集団的に分析・解釈を進める予定である。 次に、中国と米国の間を移動しながら米国の「理論」を紹介・翻訳する仕事をおこなってきたJ. Hillis Millerを取り上げ、モダニズムの「惑星的」な再考、スコットランド等英国のローカルな地域空間、20世紀の歴史化といった近年の研究や再考を批判的に吟味する。また、インドのArundhati Royの文学・政治テクストについて発表を準備するとともに、2018年のThe Novel 特集号においてあらためて再評価されたFredric Jamesonの多国籍企業時代の第3世界文学とアレゴリーについて、再度、研究・解釈を開始する。 最後に、福原麟太郎と日本の英語教育の関係を、英語教育史の観点から出された議論を整理するとともに、日本の高等教育を含む広義の学びの問題を考え直す準備を、本格的に行う。また、英国ウォリック大学のDr Richard Smith(Reader in English Language Teaching & Applied Linguistics )や中国・トルコ・東欧からの留学生向け英語教育を共同プロジェクトで 実践している Peter Brown氏とコンタクトを取り、インタヴューを含むリサーチをおこなう、と同時に、現在の教育現場・空間や授業・教室でなされている中国の英語教育や日本の小学校英語の研修についての情報収集と整理についても、準備することにより、それに基づく研究をグローバルなイングリッシュ・スタディーズの一部として組み込む予定である。
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Research Products
(7 results)