2020 Fiscal Year Research-status Report
パブリック・インテレクチュアルとしてのエマソン―自然に基づく普遍言語の可能性―
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18K00413
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小田 敦子 三重大学, 教養教育院, 教授 (80194554)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Emerson / パブリック・インテレクチュアル / ”May-Day” / パストラル・エレジー / 自然 |
Outline of Annual Research Achievements |
エマソンの自然観の革新性について、アメリカの共同研究者たちとのシンポジウムをアメリカ文学会関西支部7月例会で予定していたが、学会が中止となり実現できなかった。本として研究成果をまとめるために、研究代表者が担当するテキスト分析、共同研究者によるエマソン批評史、影響など分担を確認し、引き続き研究を進めた。前年度のホーソーン協会主催の作家の経済事情に関するシンポジウムを基にした論文集の計画があり、その編集委員となったが、そのために、自身の発表原稿「エマソン経済圏としてのコンコード」を論文集用に書き直した。2021年度に出版予定である。 「経済圏」を実現するようなエマソンの自然観の実際的、物質的側面の背景として、スコットランド啓蒙思想の中心としてアダム・スミスの影響を補強する必要を感じ、関連する自然や人間観の変遷について検証を進めている。エマソンの「神秘的」と言われる自然観の実態を解明するという面では、最初の妻に関わり起こった変化を跡付ける必要があるが、大学図書館での閲覧が休止されたこともあり、図書の借出しが制限され、予定通りに進めることができなかったが、その後の展開である『自然』と前後して書かれた詩から1867年に出版された2冊めの詩集のタイトル・ピースである長編詩 "May-Day"に至る、エマソンの詩作の集大成が"May-Day"であり、それは革新的な自然、詩学の表明であることを明らかにする論文「"May-Day'ーエマソンの「パストラル・エレジー」」をPhilologia第52号(2021)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ・ウィルスの感染状況の悪化による渡航制限や大学図書館の閉鎖、発表予定であった学会の中止などにより、まず、研究資料を十分に使うことができず、研究を進めるうえで大きな障害となった。また、オンライン授業の準備に時間を取られ、個人研究、共同研究とも研究時間の確保も難しかった。これまでの研究成果をまとめ整理することはできたが、シンポジウムの成果として期待していた新しい部分は十分に展開できなかった。そのため、研究期間を1年延長することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
エマソンの普及しようとした自然観に関する研究成果の発表を2021年度11月のアメリカ文学会例会と、その後、2022年には出版物として公開することに定め、それに向かって進めていく。他大学図書館の利用制限が解除されない場合、文献調査がどうしても限られるが、できるだけ支障のないよう資料を集め、現在研究中の近代の自然観の変遷におけるエマソンの位置づけと亡妻と自然との関係について、それぞれ論文にまとめ、これまで書いた関係する論文を手直しし、アメリカ人共同研究者の論文を翻訳し、出版原稿としてまとめる。 予定していたアメリカ人共同研究者とのシンポジウムについては、研究年度最後まで実現の可能性を探るが、対面で行う部分は日本人研究者との共同シンポジウムという形にすることも考える。
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Causes of Carryover |
アメリカ人共同研究者とのシンポジウムを日本で開催する予定であったが、学会が中止になり、また、渡航制限のため来日できなかった。次年度の開催を見込むが、コロナ・ウィルスの感染状況が秋になっても好転しない場合は、日本人研究者間でのシンポジウムを開催し、共同研究者にはオンライン、または論文で参加してもらうなど、別の形になるかもしれないが、成果発表とそれへの批判を仰ぐための機会を設ける。
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