2023 Fiscal Year Annual Research Report
Genealogy of Two Culture Controversies
Project/Area Number |
18K00415
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 雄三 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (10273715)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Two Cultures / Television / Marshall McLuhan / Raymond Williams |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で明らかにしようとした20世紀半ばの事件が文系対理系の「ふたつの文化」論争である。1959年に起こるC. P. Snow (1905-1980)とF. R. Leavis (1895-1978)とのあいだの「ふたつの文化」をめぐる論争。これは政界、アカデミズム、文壇、公共圏を巻き込んだひとつの事件であった。政界や教育界でヘゲモニーを掌握している名門校出身者たちの人文学偏重への不満、名門校の文系文化が排除している理系文化を中層・下層の階級に広めようという思惑、メリトクラシー(能力主義)による社会階層の流動化など、どれも20世紀半ばのイギリス社会の議論のように思える。ところが実際はそこにとどまらず、文化論争にもなる。それが如実に現れるのがテレビの使用をめぐるMarshall McLuhan (1911-80)と Raymond Williams (1921-1988)の論争であった。その論争の論点について、「ふたつの文化」という観点から分析した成果を、「レイモンド・ウィリアムズ―テレビのフォームとフォーメーション」(『メディア論の冒険者たち』伊藤守編,東京大学出版会,44-55頁,令和5年8月30日刊行)で公開した。その概要を述べる。「メディアはメッセージである」は単純なフォルマリズム、「メディアはマッサージである」はイデオロギーである(『テレビジョン』187)。ウィリアムズが『テレビジョン』でそう述べた1974年から、もう半世紀になる。ウィリアムズはマクルーハンのフォルマリズムを否定してはいない。彼が批判したのは、一方向的な「伝達」の制度下で、わたしたち受信者がメディアに全身をすっぽり包まれて、まるでマッサージされるように生きる世界観であった。本論では、テクノロジー決定論にもとづくポストモダン文化と民主主義のモダン文化との相剋を明らかにした。
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