2019 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期におけるウィリアム・フォークナー日本訪問の文化・文学史的意義の研究
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18K00421
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
相田 洋明 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (70196997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 有礼 中京大学, 国際英語学部, 教授 (50262829)
金澤 哲 京都女子大学, 文学部, 教授 (70233848)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フォークナー / 冷戦期のアメリカ文学 / 日米交流 / アメリカの文化外交 / 戦後日本文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1955年のウィリアム・フォークナー訪日が日本の文化・文学に与えた影響を探り、フォークナー訪日とほぼ同時期に行われた、日本におけるアメリカ文学研究の制度化を巡る諸問題を考察しようとするものである。 相田洋明、森有礼、金澤哲は、1955年の訪日をフォークナーのキャリア全体のなかで適切に位置づけるために、監訳者としてJoel WilliamsonのWilliam Faulkner and Southern History(Oxford UP)の翻訳作業に取りくみ、水声社より『評伝ウィリアム・フォークナー』として出版した。 また、長野市立長野図書館における公開講座「長野を訪れたノーベル賞作家 ウィリアム・フォークナーと長野」において、金澤哲は総合司会を務め、相田洋明は講師として「ウィリアム・フォークナーと長野」のタイトルで講演し、森有礼はMichael Modak-Truran氏の講演の逐次通訳を行った。 さらに、日本ウィリアム・フォークナー協会第22回全国大会ワークショップ“Teaching Faulkner in the Digital Age”において、森有礼は講師・司会、相田洋明、金澤哲は講師を務めた。 上記に加えて、相田洋明はフォークナーの曽祖父ウィリアム・C・フォークナーに関する論文を執筆した。森有礼はフォークナーの来日記録映画『日本の印象』に関して学会発表を行った。金澤哲は共著『フォークナーと日本文学』を出版し、フォークナー作品と大西巨人の『神聖喜劇』を比較して論じた。また、フォークナーのPylon における「作家」の問題をテーマに論文を執筆し、さらに、日本アメリカ文学会全国大会のシンポジウム「アメリカ文学研究の終わらない戦後/南部/昭和」の司会・講師を務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『評伝ウィリアム・フォークナー』の出版、長野市立長野図書館での講演会の実施、日本ウィリアム・フォークナー協会全国大会のワークショップ参加、フォークナーに関わる著書・論文の出版など着実に成果はあがっているが、この研究課題の総仕上げとして企画している『論集フォークナーの日本訪問(仮題)』の執筆者が参加予定だった研究会を新型コロナウィルス感染拡大防止のため延期したことにより、全体のスケジュールがやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
『論集フォークナーの日本訪問(仮題)』の執筆者による研究会を2021年3月に開催し、論集に含まれる研究内容について議論する。 また、2020年秋に長野市立長野図書館においてフォークナーに関連する公開講座を実施する。 さらに、相田洋明は、フォークナー訪日と日本文壇について、とくに川端康成と高見順に注目して研究を進める。森有礼は、フォークナーの日本訪問の政治的意義を、映画『ゴジラ』と比較させつつ、フォークナーが果たした冷戦期の文化外交使節としての意義を原水禁大会と照らし合わせて論じる。また、フォークナー訪日記録映画である「日本の印象」とフォークナーのエッセイ「日本の若者へ」を、アメリカ合衆国に対するポストコロニアリズムの観点から批判的に検証する。金澤哲は、フォークナー来日の意義について、初期から50年代にわたる創作全体との関連から明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由)この研究課題の総仕上げとして企画している『論集フォークナーの日本訪問(仮題)』の執筆者が参加予定だった研究会を新型コロナウィルス感染拡大防止のため次年度に延期したため。
(使用計画)『論集フォークナーの日本訪問(仮題)』の執筆者による研究会の旅費として用いる。合わせて、研究会準備のための打合せ会や研究書購入にあてる。
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Remarks |
森有礼は、長野市立長野図書館講演会「長野を訪れたノーベル賞作家ウィリアム・フォークナーと長野」(2019年7月)において、講演講師Michael Modak-Truran氏の講演“The Past Is Never Dead: the Story of Willilam Faulkner”の逐次通訳を行った。
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