2021 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期におけるウィリアム・フォークナー日本訪問の文化・文学史的意義の研究
Project/Area Number |
18K00421
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
相田 洋明 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (70196997)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 有礼 中京大学, 国際英語学部, 教授 (50262829)
金澤 哲 京都女子大学, 文学部, 教授 (70233848)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | フォークナー / 冷戦期のアメリカ文学 / 日米交流 / アメリカの文化外交 / 戦後日本文化 / 日本のアメリカ文学研究の制度化 |
Outline of Annual Research Achievements |
相田洋明は、論文「日本におけるフォークナーの足跡と『長野でのフォークナー』」を執筆した。加えて、日本ウィリアム・フォークナー協会第24回全国大会シンポジウム「作家とその妻/夫」において、フォークナーとその妻エステルの実人生とフィクションの二つのレベルでの関わりについて発表した。 森有礼は、論文「太平洋戦争の記憶、『ゴジラ』、そしてフォークナー訪日の意義」を執筆した。加えて、フォークナーを含む20世紀の新たな古典文学の再検討を通じて冷戦期の「語りのレトリック」について考察するため、共編著書『物語るちから――新しいアメリカの古典を読む』を上梓した。さらに、日本アメリカ文学会第60回全国大会シンポジア「〈ホラー〉の機能」にて「アメリカン・アイデンティティの「現実」としてのホラー」の発題において、アメリカ文学・文化史におけるパラノイアの系譜として、フォークナーを冷戦期における人種のテーマと関連付けて考察した。 金澤哲は、論文「教育の可能性――長野セミナーと『町』」を執筆した。加えて、日本におけるアメリカ文学研究の根底に存在する「友だちになりたい」という願望(竹村和子)の批判的検討のため、エマソンとソローの友情論をデリダを通して解読する研究を行い、日本英文学会関西支部第16回大会シンポジウム「分断の時代の孤独/融和」において発表した。 さらに、相田洋明は、上記相田論文、森論文、金澤論文にさらに5編の論文を加えて論集『ウィリアム・フォークナーの日本訪問――冷戦と文学のポリティクス』を企画編集し、二〇二二年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果公開促進費(学術図書)に応募した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論集『ウィリアム・フォークナーの日本訪問――冷戦と文学のポリティクス』をとりまとめ、二〇二二年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果公開促進費(学術図書)に応募できたから。
|
Strategy for Future Research Activity |
相田は、日本を去った後にフォークナーが訪れたフィリピンとヨーロッパでの足跡を調査し、日本におけるフォークナーの活動とその受容の特質についてさらに考察を深める。 森は、冷戦期におけるフォークナーの再評価について、特に来日に到るまでの合衆国におけるフォークナーの文学史・文化史的受容の変化について調査を行い、フォークナーが冷戦期におけるアメリカ文化外交において持つ意義を再検討する。 金澤は、『寓話』を中心に50年代のフォークナー作品を読み直し、特にその越境的な政治性をサイードによる「レイトスタイル」の概念を参照しながら検討する。
|
Causes of Carryover |
(理由)当該テーマに関わる研究書の出版が必ずしも多くなく、また2021年夏に予定していたフォークナーに関わる学術講演会がコロナ禍により延期になったため。 (使用計画)論集『ウィリアム・フォークナーの日本訪問――冷戦と文学のポリティクス』の出版に合わせて学術講演会の開催を計画しており、そのための諸費用として用いる。
|