2020 Fiscal Year Research-status Report
モダニズム以降のイギリス文学・文化におけるノスタルジアの情動論的・空間論的研究
Project/Area Number |
18K00426
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秦 邦生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00459306)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | モダニズム / ノスタルジア / ユートピア / ディストピア / イギリス文芸批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、モダニズム期以降のイギリス文学・文化におけるさまざまなノスタルジア的表象とその変容を、情動理論ならびに空間的移動という観点から再考するものである。 研究計画の3年目にあたる2020年度では、初年度からこの研究の中心に据えているジョージ・オーウェルの作品研究に立ち戻り、特に近年多くの注目を集めている『一九八四年』に関する論文集の執筆ならびに編集に大半の時間を割いた。本研究代表者が編者を務めるこの論集は、序論と後書きのほかに、論文計11篇、コラム計8篇によって『一九八四年』を多角的に検討するものである。編者として私は、①オーウェルの『一九八四年』ならびに『動物農場』における人間性表象に関する論考一篇、②ディストピア小説の伝統における『一九八四年』の位置付けに関するコラム一篇、③現代においてこの小説を読む意義を論じた序論、④後書きを兼ねた文献案内、⑤翻訳論考の解題、などの執筆を担当した。2020年11月に全体の原稿を入稿し、現在は2021年5月の刊行を目指して最終調整中である。 このほかの研究実績としては、2020年12月に表象文化論学会のオンライン研究フォーラムにて、「ポスト・トゥルース」をめぐるワークショップに参加し、口頭発表を行った。また、2021年3月には近藤康裕氏による邦訳が刊行されたステファン・コリーニ『懐古する想像力』をめぐるワークショップを開催し、企画の趣旨説明ならびに司会として、4人の講師とともにイギリス文芸批評の伝統とノスタルジアの関係について議論を交わした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年初頭からはじまったコロナ禍のために海外での資料収集や海外研究者との研究交流などはいまだに困難をきわめている状況であるため、古書や新刊書籍として入手可能な資料を優先的に入手する方向に切り替え、研究活動にとって意義ある資料を入手した。また、2020年度に多くの努力を注いだ論文集は2021年度春に刊行予定であり、その点では研究計画は全体的におおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず2021年度春に『一九八四年』に関する論文集を無事刊行までこぎつけると同時に、ジョージ・オーウェルの文学と批評活動がイギリスにおいてどのように評価されてきたのか、20世紀後半イギリスの代表的批評家レイモンド・ウィリアムズの著作を中心に検討を続ける予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度末に当初計画していた海外研究者の招聘ならびに2020年度に予定していた海外での資料収集活動がコロナ禍によってどちらも中止となってしまったため、旅費での執行を考えていた金額を主に物品で執行したが、2020年度中に全額を執行することはできなかった。2021年度も同じ状況が続くことが予想されるため、この次年度使用額もまた物品費で研究資料の収集を中心に執行する予定である。
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Research Products
(3 results)