2019 Fiscal Year Research-status Report
古・中英語期における女性聖人伝の系譜研究:Aelfricのテクストと言語を中心に
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18K00431
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
島崎 里子 昭和女子大学, 文学研究科, 准教授 (90276618)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 古英語 / 聖人伝 / 女性 / Aelfric |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に作成した古・中英語期における女性聖人を題材とする作品のカタログ・データベースを活用して、系譜の観点から比較対照調査が可能となる、同一の女性聖人を主人公として扱った作品群の抽出作業を行った。 その結果、ヨーロッパ大陸からイギリスに伝播し、Aldhelm(7C)、Bede(8C)らのアングロ・ラテン期を経て、作者不詳のOld English Martyrology(9C)、Aelfric(10C)などの古英語期に至るまで、最も多くの作家たちが採用していることが判明した女性聖人伝のひとつである「聖ユージニア伝」に着目し、それぞれの作家のテクストを並列して配置するパラレルテクストを作成する作業に着手した。 パラレルテクスト作成の第一段階として、まずは、本課題研究の中心となるAelfricの古英語テクストの校訂作業を行った。作業に当たっては、British Library (London) の協力を受け、既存のテクスト(Skeat:1891-1900)と原写本(MS Cotton Julius E. Vii)との厳密な照合を行って、その異同を明らかにしながら、電子版のdiplomatic editionを新たに作成した。 なお、ここで得られた成果については、論文「Aelfricの「聖ユージニア伝をめぐって--Diplomatic Text of 'the Life of St, Eugenia' in Aelfric's Lives of Saints, Traial Version」にまとめ、『昭和女子大学女性文化研究所紀要』第47号、23-35(2020)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、前年度に作成した古・中英語期の女性聖人を題材とする全作品のカタログ・データベースを利用して、同一の女性聖人を取り上げている作家を抽出し、それぞれの作家のテクストを系譜の観点から並列して配置する、新しい電子版パラレルテクストの作成を目指していた。 しかし、作家を抽出し、めぼしい聖人を拾い出した後、調査の中心となるAelfricの古英語テクストについて、新たなdiplomatic editionを作成して、いよいよ他作家のテクストと比較対照可能なパラレルテクストの作成に取りかかろうとしたところで、COVID19の感染拡大に伴う大学業務が増大し、研究が一時中断してしまった。その結果、進捗状況がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の目標であった、古・中英語期の女性聖人について、系譜の観点から検証可能なパラレルテクストを完成させ、そこからそれぞれの作家の女性聖人伝の特徴を、言語とテクストの両面から考察していく。 ただし、diplomatic edidionの校訂については、作業に不可欠な写本の閲覧をCOVID19の影響下でどのように行っていくのかが、今後の課題となり得る。オンラインでの閲覧が可能な資料については、機能を最大限に活用し、それ以外の部分については、現地図書館との連携を緊密に取りながら、方法を模索していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度に購入したパソコンが、想定していた価格よりも安価であったため、差額が生じた。次年度に予定している、英国図書館での原写本閲覧のための出張費用の一部に充当する計画である。
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