2018 Fiscal Year Research-status Report
太平洋横断的ヴェトナム系アメリカ文化研究の構築にむけてー難民文化の再越境と変容
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18K00435
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
麻生 享志 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (80286434)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トランスパシフィック文化 / ヴェトナム系難民 / 移民・難民文化 / 複合文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)カリフォルニア州立大学アーバイン校ラングソン・ライブラリー内にある特別資料室、およびゲートウェイ・スタディー・センター内にある東南アジア資料室において、ヴェトナム戦争後の難民に関する資料等の調査・研究にあたった。その対象はすでに絶版となっている書籍をはじめ、当時の日刊紙、コミュニティ・ペーパー、学生団体による発行物やイベント関連のチラシ・プログラム等現在では入手困難、もしくは市場には流通していないものである。こうした資料から1970年代後半から2000年代初頭に至るヴェトナム系難民のリトルサイゴンを中心とするコミュニティ・文化の形成と発展を理解するのが目的である。主な調査資料には、以下のものを含む。i) Vietnamese American Art and Letters Association Collection, 2002-2005; ii) Vietnamese Student Association at the University of California, Irvine Records, 1979-2009; iii) Guide to the Government of Free Vietnam Publicity and Organizational Materials.(2018年8月) 2)ヴェトナム系アメリカ人1.5世に属し、現在マルチメディア・アーティストとしてアメリカ西海岸、および東南アジア諸国で活躍しながら、California College of the Arts で教鞭を執る Viet Le 氏と交渉し、2019年夏に本研究資金により来日、早稲田大学での講演・ワークショップの開催を依頼し承諾された。本企画は太平洋横断的ヴェトナム研究の構築に向けて重要な礎となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)現地資料調査・研究により、ヴェトナム系難民の歴史的文化的軌跡に関する貴重な資料を閲覧等したことで、リトルサイゴンを中心とするヴェトナム系アメリカ人共同体における社会・文化形成に関する学会における研究発表の準備、ならびにその発表を基盤とする論文等の執筆を進めている。その内容は個々のヴェトナム系アメリカ人作家・アーティストがつくる作品の分析を中心とするものだが、同時に文化・芸術が共同体形成にいかに寄与してきたかを問うものでもある。 2)Viet Le 氏の招聘が約束されたことで、日本をハブとしアメリカとヴェトナムを結びつけた太平洋横断的なヴェトナム系難民文化研究を展開するという本研究の最重要課題をスタートすることができた。Le 氏はアメリカ国内のヴェトナム系難民アーティストと強いつながりを持つだけでなく、ヴェトナム在住のアーティストとの関係も深い。今後 Le 氏の知見や人脈を基礎に本研究の拡大を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)2019年6月開催の日本英文学会関東支部夏季大会、および10月開催のアメリカ文学会全国大会における研究発表を通じ、ヴェトナム系アメリカ人作家 Viet Thanh Nguyen のピューリッツァー文学賞受賞作 The Sympathizer、ヴェトナム系フランス人作家 Clement Baloup のグラフィックノベル Vietnamese Memories, 2vols を中心に研究を進めると同時に、すでに書き上げている他の論考を含め2020年を目処に単著を発表したい。 2)Viet Le 氏の招聘を基礎に他のヴェトナム系アーティストとのネットワーク構築を進め、2019年度以降の太平洋横断的なヴェトナム研究の実施に努めていきたい。今後、ヴェトナム在住のアーティストの招聘や、フランス等アメリカ以外の国へと脱越したヴェトナム系難民も視野に研究対象を拡大するきとで、より幅広い視点からヴェトナム系文化、ならびに難民文化の展開を考察する。
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Causes of Carryover |
予定していたPCの購入を適切な機種がなかったために見合わせたこと、ならびに出張期間・回数が当初予定よりも少なくなったことによる。PCについては2019年度以降実施し、出張等については海外研究者の招聘費への充当も含め、適宜支出の予定である。
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