2021 Fiscal Year Research-status Report
太平洋横断的ヴェトナム系アメリカ文化研究の構築にむけてー難民文化の再越境と変容
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18K00435
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
麻生 享志 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (80286434)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヴェトナム戦争 / ヴェトナム系難民 / アジア系アメリカ / アメリカ大衆文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 2020年4月に刊行した単著『『ミス・サイゴン』の世界―戦禍のベトナムをくぐり抜けて』(小鳥遊書房)改訂版出版の準備を整えた。1989年イギリスで制作されたミュージカル『ミス・サイゴン』を多角的に分析した本書だが、2022年7月より同ミュージカルが日本で再上演されることもあり、さらに内容を充実させることにした。改訂にあたっては、1991年のアメリカ・トニー賞において本ミュージカルが受けた評価を再検証する一章を新たに加えた。改訂版の出版は2022年夏を予定している。 2) 2022年度発行予定の『アメリカ文学と大統領』(南雲堂)への掲載論文「ゴー・エレクトリック・ボブ・ディラン―ケネディ暗殺と対抗文化」を執筆した。今後、最終校正を経て発刊の予定である。ヴェトナム戦争がアメリカ大衆文化に与えた影響について論じる本稿では、アメリカ第35代大統領ジョン・F・ケネディー政権の東南アジア政策と2016年ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの音楽作品の関係性に焦点をあて論じた。 3) ベトナム系難民作家 Lan Cao とその娘 Harlan Margaret Van Cao が2020年夏に米ペンギン社より出版した共作による自伝書 Family in Six Tones: A Refugee Mother, an American Daughter の翻訳・出版を計画、その翻訳権を小鳥遊書房を通じて取得すべくペンギン社との交渉を開始した。翻訳作業については概ね順調に進む一方で、コロナ禍の影響はアメリカ出版界にも強く見られ、翻訳権取得には通常以上の時間を要しており、2021年度末の時点で継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に続き、2021年度もまたコロナ禍の影響を大きく受けた結果、海外でのフィールドワーク、および海外講師の招聘等を一切行うことができず、本研究課題も予定通りに進めることはできなかった。そのなかで、『『ミス・サイゴン』の世界』改訂版の準備が概ね整ったこと、長く準備を整えてきた共著『アメリカ文学と大統領』の刊行の準備がほぼ整ったことは評価できる。一方、出版界においては、コロナ禍の影響に加え、不安定な経済状況もともない、"Family in Six Tones" の翻訳権取得交渉には、通常ではありえない時間を要している。今後、翻訳作業を経て刊行に至るまでには、今しばらくの時間を要する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間に比べ落ち着きを見せている新型コロナウィルスによる感染状況ではあるが、本研究の主要課題である海外におけるフィールドワークの再開や海外講師の招聘は難しく、今後の見通しはやや不透明である。そのなかで、国内学会の対面実施の再開が始まれば、これまでの研究成果の公表に、より一層の進展が見られることと期待する。 一方、海外との行き来がかつてほど頻繁に行われていない現状を省みるならば、オンライン等を使っての情報収集や意見交換、および研究成果の発信を過年度以上に積極的に進めていく必要性があるだろう。SNS等のメディアの活用も視野に、本年度末にはこれまで積み重ねてきた本課題における研究成果をわかりやすいかたちで公表する準備を整えたい。
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Causes of Carryover |
Lan Cao and Harlan Margaret Van Cao, "Family in Six Tones: A Refugee Mother, an American Daughter" の翻訳・出版を念頭に、その翻訳権取得を進めてきたが、版元であるアメリカ・ペンギン社との翻訳権取得交渉が、コロナ禍等の影響から通常に比べ遅々として進まず、年度内の契約が叶わなかった。そのため、予定していたローヤルティ等の支払が2021年度には発生しなかった。また、コロナ禍の影響から、本研究に本来ならば欠かせない海外でのフィールドワークや海外講師の招聘等が実施できなかった。以上のことから、本年度予算の繰り越しが発生した。
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